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乙女ゲームに転生したようです。
第9話:新情報、増えました
しおりを挟むカタコトと小さな音をたてながら、馬車が王都を進む。
街道を行く他の馬車よりも響く音が小さいのは気のせいではない。
エルクエール公爵家の馬車は、他家よりもサスペンションが良いのだ。
これって異世界チート?と、言いたいところだが、そこまでではない。
『甘王公式本』が目の前に現れてから、何度か新しいページが開放された。
全部設定ページだが、そこの中の1つに馬車の絵があった。
王家の馬車の絵だったが、それとこの世界の馬車がだいぶ違って見えたので、写した絵を子供のいたずら描きを装って父に渡した。
「フィオ?これは馬車だね?どこで見たんだい?」
待ってましたよ、その台詞!!
「夢ですね。夢の中で凄く乗り心地が良かったんです」
私の嘘八百に首を傾げながらも、意識はイラストへと向いている。
頭の良い父なら、絶対に興味を持ってくれると思ってました。
うちの馬車だけで良いですから、乗り心地良くしてくださいね。
それが5年前。
優秀な公爵領の職人が実現させてくれたのが4年前。要はたった1年で稼働させてくれたのだ。本当に優秀。
バカ殿下に会いに王城に行く憂鬱さを少しでも軽減できて良かったわ。
ちなみに馬車のイラストが開放されたイベントは『王城でのお茶会に招待された時に使用。通常は婚約者であるシフォンティーヌが王子に会いに王城に来る際に使用』の中の『王子に会いに~』の日程が決まった時である。
もう名前だけの婚約者で良くね?学園入学まで領地に引っ込もうぜ……と、家族間で思い始めた頃、王家からの「王妃教育は週1で良いよね?その際には、王子に会って行ってね」の連絡が来た。
王妃教育?そもそもバカ殿下、王太子じゃないじゃん。
まぁ、バカ殿下でも後継者になる確率は0ではないからしょうがないか。
余談だが、王家から迎えに来た馬車はイラストとは似ても似つかない物で、当時の公爵家の馬車よりも数段乗り心地が悪かったから、一回でお断りしましたとも。
ほぼ顔パスならぬ紋章パスで王城に入る。馭者の顔もあるから、やはり顔パス?まぁ、何でも良いか。
5年も通えば見慣れるよね。
この5年の間に開放された他の情報。
攻略対象が2名。
『カシュール・ブラン 宰相の息子』『王子の側近候補』
『アーモンディ・クラフ 騎士団長の第ニ子』『王子の側近候補』
息子と第ニ子の表現の仕方の違いが気になるが、今のところ不明。
側近候補とあるくらいなので、子供の頃から一緒にいる。
騎士団長の息子とは、7歳の時に会った。
バカ殿下が私と会うのをドタキャンして剣の訓練をしていた時。
ドタキャンして剣の訓練してるって言うから「帰りますね」と笑顔で告げたら、王子付きの侍従が「王子の訓練している姿を見て行きませんか?」と半ば強引に見学に連れて行った。
その時、バカ殿下の相手をしていたのが件の人物なので、会ったと言うか見たが正しい。
宰相の息子とは、9歳の時。
約束の時間より大分前に王妃教育が終わってしまった為、王城の図書室で時間を潰していた時だ。
読みたい本に手が届かず椅子でも取って来るか、係の人を呼んで来るか悩んでいたら隣に立ち「難しい本を読んでいるふりをしても、周りの人は騙せませんよ」とか失礼な事を言ってきた。
無視していると「遊んでいないで早く王子に会いに行きなさい」とか偉そうに言ってきた。
図書室から出て行った時、扉の陰にいたバカ殿下と合流していたのは丸見えだったよ。子供の浅知恵だね。
そう、2人とも名乗られていないので、この世界での正式名はまだ知らない。
二人の情報を読んだ時に「豆かよ!」とツッコミを入れてしまい、メイドが部屋に飛び込んで来たのは良い思い出。
同じメイドだったので「あれ?2年前に同じような事ありませんでした?」と言われたのも良い思い出。
記憶力良いな、うちのメイド。
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