9 / 113
乙女ゲームに転生したようです。
第9話:新情報、増えました
しおりを挟むカタコトと小さな音をたてながら、馬車が王都を進む。
街道を行く他の馬車よりも響く音が小さいのは気のせいではない。
エルクエール公爵家の馬車は、他家よりもサスペンションが良いのだ。
これって異世界チート?と、言いたいところだが、そこまでではない。
『甘王公式本』が目の前に現れてから、何度か新しいページが開放された。
全部設定ページだが、そこの中の1つに馬車の絵があった。
王家の馬車の絵だったが、それとこの世界の馬車がだいぶ違って見えたので、写した絵を子供のいたずら描きを装って父に渡した。
「フィオ?これは馬車だね?どこで見たんだい?」
待ってましたよ、その台詞!!
「夢ですね。夢の中で凄く乗り心地が良かったんです」
私の嘘八百に首を傾げながらも、意識はイラストへと向いている。
頭の良い父なら、絶対に興味を持ってくれると思ってました。
うちの馬車だけで良いですから、乗り心地良くしてくださいね。
それが5年前。
優秀な公爵領の職人が実現させてくれたのが4年前。要はたった1年で稼働させてくれたのだ。本当に優秀。
バカ殿下に会いに王城に行く憂鬱さを少しでも軽減できて良かったわ。
ちなみに馬車のイラストが開放されたイベントは『王城でのお茶会に招待された時に使用。通常は婚約者であるシフォンティーヌが王子に会いに王城に来る際に使用』の中の『王子に会いに~』の日程が決まった時である。
もう名前だけの婚約者で良くね?学園入学まで領地に引っ込もうぜ……と、家族間で思い始めた頃、王家からの「王妃教育は週1で良いよね?その際には、王子に会って行ってね」の連絡が来た。
王妃教育?そもそもバカ殿下、王太子じゃないじゃん。
まぁ、バカ殿下でも後継者になる確率は0ではないからしょうがないか。
余談だが、王家から迎えに来た馬車はイラストとは似ても似つかない物で、当時の公爵家の馬車よりも数段乗り心地が悪かったから、一回でお断りしましたとも。
ほぼ顔パスならぬ紋章パスで王城に入る。馭者の顔もあるから、やはり顔パス?まぁ、何でも良いか。
5年も通えば見慣れるよね。
この5年の間に開放された他の情報。
攻略対象が2名。
『カシュール・ブラン 宰相の息子』『王子の側近候補』
『アーモンディ・クラフ 騎士団長の第ニ子』『王子の側近候補』
息子と第ニ子の表現の仕方の違いが気になるが、今のところ不明。
側近候補とあるくらいなので、子供の頃から一緒にいる。
騎士団長の息子とは、7歳の時に会った。
バカ殿下が私と会うのをドタキャンして剣の訓練をしていた時。
ドタキャンして剣の訓練してるって言うから「帰りますね」と笑顔で告げたら、王子付きの侍従が「王子の訓練している姿を見て行きませんか?」と半ば強引に見学に連れて行った。
その時、バカ殿下の相手をしていたのが件の人物なので、会ったと言うか見たが正しい。
宰相の息子とは、9歳の時。
約束の時間より大分前に王妃教育が終わってしまった為、王城の図書室で時間を潰していた時だ。
読みたい本に手が届かず椅子でも取って来るか、係の人を呼んで来るか悩んでいたら隣に立ち「難しい本を読んでいるふりをしても、周りの人は騙せませんよ」とか失礼な事を言ってきた。
無視していると「遊んでいないで早く王子に会いに行きなさい」とか偉そうに言ってきた。
図書室から出て行った時、扉の陰にいたバカ殿下と合流していたのは丸見えだったよ。子供の浅知恵だね。
そう、2人とも名乗られていないので、この世界での正式名はまだ知らない。
二人の情報を読んだ時に「豆かよ!」とツッコミを入れてしまい、メイドが部屋に飛び込んで来たのは良い思い出。
同じメイドだったので「あれ?2年前に同じような事ありませんでした?」と言われたのも良い思い出。
記憶力良いな、うちのメイド。
71
お気に入りに追加
1,933
あなたにおすすめの小説

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?
ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。
一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?

公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路
八代奏多
恋愛
公爵令嬢のレシアはヒロインを自称する伯爵令嬢のセラフィから毎日のように嫌がらせを受けていた。
王子殿下の婚約者はレシアではなく私が相応しいとセラフィは言うが……
……そんなこと、絶対にさせませんわよ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる