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03:仲良くしよう!
しおりを挟む朝、メイドが部屋のカーテンを開けに来る。もう一人がお湯の入った洗面器を持って来て、もう一人はタオルを数枚。
他にベッドサイドから小さなテーブルを出して来る人がいて、洗面器がそっと置かれる。更に私の首元に大きめのタオルを巻く人がいる。
これだけで全部で五人よ、五人。
タオルを持っている人なんて、ただ立ってるだけなんだけど!
テーブルの人と洗面器の人は、カーテン開けた人と一緒に服を用意してる。
タオルを巻いた人が前髪を留めてくれて、長い髪を後ろで纏めて持ってる。
え? 結んでくれれば良いんだけど?
「持ってるの大変でしょう? 結んでくれれば良いよ」
笑顔で優しく言ったのに、髪を持ってた人は顔面蒼白になっちゃった。
これは、昨日までの悪役令嬢の影響かなぁ。
「申し訳ございません! 何か不手際がございましたでしょうか? もしや引っ張ってしまいましたか?!」
髪から手を離したメイドは、すっごい驚くほど深く頭を下げた。
「え? 違う違う! 大変そうだから、無理しなくて良いよって意味だったんだけど……」
急いでフォローしたんだけど、洋服の準備をしていたメイドに連れられて、部屋を出て行ってしまった。
何となく部屋の雰囲気がピリピリしてるんだけど、これも今までの悪役令嬢の弊害だよねぇ。
もっとメイドの人達と仲良くなりたいのになぁ。
微妙な空気の中、記憶の中にあるようにお湯で顔を洗った。
身支度を整えて、朝食を食べに食堂へ行く。
何で三人家族なのに、こんな十人以上座れるテーブルが必要なのかな。
椅子も使用人が引いたり押したりするのに合わせて座んなきゃいけないの。めんどくさい。
テーブルマナーは記憶と身体に染み付いた慣れ? のお陰で問題は無かった。
でも、食べた気しない。
ウインナーなんて、フォークに刺して齧りつけば良いじゃん。
小さく一口大に切ってモソモソ食べて美味しい?
でもさすがに解る。
ここでそれをやったら、怒られちゃうって。
さっき、食堂に入った時に普通に挨拶したら、父親はジロリと睨んでくるし、母親は視線さえ向けてこないで溜め息吐いたんだよ。何それ。
こんな環境じゃ、悪役令嬢が育つはずだわ。
「ドロテア。しばらく朝のメイドは四人で我慢しなさい」
もうすぐ食事が終わるって頃、父親が話し掛けてきた。
意味が解らなくて無言でいたら、また母親が溜め息を吐く。今度は口も開いた。
「何が気に入らなかったのか知らないけど、我儘も大概にしなさい」
相変わらず視線は合わない。
ってか、何を言ってるの?
私は髪を持つだけのメイドなんて贅沢だし、相手が可哀想だからやらなくて大丈夫だよって言ってあげたんじゃん。
なんで我儘になるの?
意味わかんないし、ムカつきながら部屋へ戻った。
部屋では四人のメイドが待っていた。
顔に薄化粧をされ、髪をハーフアップに結われ、高そうな髪飾りをされる。
しかもバレッタじゃなくて、自分では取れなさそうなヤツ。
無言で作業されて、居心地が悪い。
鏡の中でも、誰とも目が合わないし、何これ。
「ねぇ、朝のあの人はどうしたの?」
途中退席したメイドの事を聞くと、全員の視線が更に下がった。
「二度とお嬢様の目を汚す事は無いので、ご安心ください」
え? だから、何それ。
意味わかんない。
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