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行きたい所へ行く!それが冒険。多分
第496話:新しい職業
しおりを挟むキャッキャウフフと形容したい位に盛り上がっている店主とユズコの隣で、冷めた目をしている俺。
その横で大人しくおすわりしているガルム。ヨミは飽きたのか、俺の服の中で寝始めた。
他は……ヨダレヨダレ。
皆の視線が大きな虫サイズのミートパイに釘付けである。
見た目はともかく、美味しいのだろう。食べてないけど、確定。
虫で盛り上がるのは後にしてもらって、このミートパイを売ってくれないかな。
二人を冷めた目で観察していると、再度チーンと音がした。まだ焼いていたらしい。
ハッと意識を下に移した店主がしゃがみ、また虫パイを取り出し……虫ではなかったか。
タコだタコパイ。ウインナーのタコというか、イイダコの煮物というか、あの足がクルンとしているかわいいタコだ。
サイズは一口大で、タコ焼きに足が生えた程度。
これ、足クルンはどうやって作ったのか……クオリティ高いな。
そのタコ達が天板にお行儀良く並んでいる。
そしてやはり瓶から液体をドボドボ。赤紫な液体が白衣に飛ぶ。
他にやりようはないのか?
「調理、コーティング」
店主が呪文を唱え、キラキラなタコパイの出来上がり。
妙にリアルだけど、そこは気にしたら負けだ。
「おい、眼鏡に飛んでるぞ」
赤紫の液体が店主の眼鏡に飛んでいる。
結構な汚れ具合なのに、見えているのだろうか?
「え?」
店主が眼鏡に触れ、濡れている事に驚いている。
いや、眼鏡が汚れているのに見えていないのか?
「洗わないと駄目だろう」
大きな体に似合わない俊敏さで、ユズコが店主の顔から眼鏡を外した。
ユズコ的には、瓶底眼鏡を外したら何も見えないだろうと考えての、純粋な親切心からだと思う。
ユズコだから。
しかし小さな親切大きなお世話、と言う言葉が有るように、店主には有難迷惑だったようだ。
「ソレが無いとキャラが!」
瓶底眼鏡の下から現れたのは、えらい綺麗な顔だった。
綺羅を邪悪にした感じ。綺羅は天使だから、対極する悪魔とかだろうか?
話し方も普通だな。
「オドオド眼鏡?」
瓶底眼鏡を見ながらユズコが首を傾げる。
おそらく鑑定したのだろう。
「顔じゃなくて、モノで勝負したくて、態とキワモノキャラに変装してました」
マッドサイエンティストな店主は、とても美しい悪魔な虫好きでした。
あ、牙は付け歯だとか。
しかし好きだからといって、食べ物にするか?
思わず聞いた俺は悪くないと思う。
「装飾品では需要無いし、魔導具師や錬金術師に転職するには時間が掛かりすぎるし」
「職業は何?」
「造形師」
は?
「本来は、店頭に飾る見本品とか、フィギュアとかを作るんだろうけど」
言いながら、店主は小麦粉とバターをコネコネしだした。
はい、と差し出されたのは、掌サイズのテラだ。
何これ、可愛い。
更にコネコネして出てきたのは、タダムネ。
「焼いてないから食べられないよ」
両手のテラとタダムネを感動して眺めていたら、店主に注意された。
この可愛い……タダムネは可愛いか疑問だが、とにかくうちの子達を食べるのは無理。
たとえパイになったとしても。
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