ほんわりゲームしてます I

行きたい所へ行く！それが冒険。多分

第493話：商売人の鑑？

『美暴食街』と言うくらいなので、そこかしこから誘惑の匂いがしている。
「何か欲しい物があったら買うぞ」
　従魔達に声を掛けると、キラキラした目が集まった。
　おぉう！眩しい！！

＜肉！＞
　お馬鹿なムンドが叫んで……落ちた。
　浮遊しているタダムネの首に輪になって嵌はまっていたのだから、当然の結果である。
　しかし地面には激突せずに、ふわりと浮いてタダムネの横に並ぶ。
　そうだった。ムンドも飛べる系だった。

＜この先から美味しそうな匂いがしているのだよ＞
　お前、まだプーリの頭の上に居たのか、リルさんや。
　とりあえず、行先は決まった。
　美味しい匂いの元へ行くぞ！



「よりによって……いや、でも『美暴食街ここ』限定らしいし、良いのか？」
　俺は、タコ焼き屋台を遠くから見つめていた。
　そう。美味しい匂いの元は、あのタコ焼き屋の支店だった。
　支店ここの方が立派だけどな！

＜早く行こうぜ！主！＞
　ムンドが耳元で叫ぶ。
　大きさはまだミミズサイズなので、叫ばれても問題無いが、俺よりもリルには問題があったようだ。
　小さいままのリルがムンドに飛びついて、その首根っこを齧る。
＜何度言ったら解るのかな？このお馬鹿な弟は＞
　本来の大きさだと焦る光景だが、俺の掌に載るサイズの争いなので、妙にほんわかして癒される。


「おう！坊ボン！ようやっと来たな！」
　ちょっと離れた所から見ていたのに、なぜかバレてしまって相手から声を掛けられてしまった。
　声がデカイ上に俺を手招きしながらなので、周りに居る全ての視線を集める事になり……諦めて屋台へ近付く。
「なぜ『美暴食街』に居る？」
　店の横に行き、声を掛けた。
　ここでも列が出来ており、前から行くと商売の邪魔になりそうだし、下手すると強制的に割り込みさせられる危険があるからだ。
「そりゃあ追いかけたに決まってるやろ！」
　とても良い笑顔だ。

「美暴食街ここ限定の『豚塩麹葱焼き』や！」
　それは、既にタコ焼じゃ無いよな？タコどこ行った？タコは。看板の蛸が泣くぞ？
　いや、美味しそうだけど！

　パーティー用か？と言いたくなる大皿に、山盛りの塩麹豚葱塩焼き？ん？塩豚葱麹焼き？……とにかく、『美暴食街』限定豚焼きがうず高く積まれた物を渡される。
　ギルドカードを渡そうとすると「試食や！」と拒否された。

　いやいやいや。
　この、鉄板１枚分全て載せましたな量の試食って何！？


　最初「坊から金は取れんわ」と言っていたタコ焼き屋のお姉さんだが、割引率100％のカードを見て、ニッコリ笑って支払い手続きをした。
　そういう現金なところは、割と嫌いじゃないぞ！

＜いっただき～！＞
　山の頂点のタコ焼き……じゃなく豚焼きを、ムンドがパクリと咥えて飛んで逃げた。
　いや、盗まなくてもやるけどな。
　ムンドはミミズサイズのままなので、遠目だと豚焼きから虫が出ているように見える。
　食欲減退な構図だ。

　商売の妨害になりそうだな、と心配した途端に捕獲。プーリが。おそらく頭の上のリルに命令されたのだろう。
　プーリがムンドの胴体を咥えて戻って来た。
　嘴からプラーンとぶら下がっているムンドは、豚焼きを口から離さなかった。