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行きたい所へ行く!それが冒険。多分

第487話:『美暴食街』

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 何事も無く、目的の『美暴食街』に着いた。
 他のメンバーがグッタリしているけど、気にしたら負けだ。
 通行証代わりにギルドカードを出して……衛兵の視線がさ迷っている。
「その……黒い魚?は……従魔、ですかね?」
 俺の斜め上をフヨフヨと浮いているバハムートは、まだ従魔契約が済んでいない。
 格好良い名前が決まるまで、保留なのだ。

「あぁ、従魔になる事は決めているらしいが、名前が決まらないらしい」
「は?」
 変な顔をされてしまった。
「従魔じゃないのに意思の疎通が出来てるのって変だからね~」
 オーべからツッコミが入った。
「従魔でも、一般的には変なんだからね!」
 リコンスから更にツッコミが入った。

「バハムートは外で待つしかないでしょうね」
 レイが言い切る。
 そうだけど、その通りだけど、モフモフじゃないからか冷たいな。
「名前は後からでも付けられるだろう?とりあえず従魔契約だけ結んだらどうだ?」
 ジルドがバハムートに話し掛ける。


 確かにヨミとかは、後から名前付けたよな。
 俺はどっちでも良いので、バハムートの希望に沿うようにしよう。
拙者せっしゃの名前は、忠宗タダムネと申す>
 いきなりバハムートが名乗りを上げた。
 そして俺とバハムートが光る。

 周りから「おぉ~!」と歓声と拍手が起こった。
 衛兵も他に並んでいた見ず知らずの人も、つられて拍手している。
 従魔契約成立テイムしたようです。はい。
 いや、その前にタダムネって誰?
 提案していた武将の名前に、タダムネなど無かったよな?

 バハムートを見ていた視線を、ジルドへと向ける。
 グルンと音が聞こえそうな勢いで目を逸らされた。
 ヲイ!



「伊達政宗の息子の名前だ」
 ジルドがタダムネの元ネタを教えてくれる。
 おい、こっちを向け。
 ジルドの視線は斜め下。
 今居るのは、商業ギルド内の待合室。
 冒険者ギルドにタダムネの登録に来たら、横の建物が商業ギルドだった。
 大量の食材を売るのならば、ギルドに相談するのが良いのでは?と来てみたのだ。

「……おい」
「いや、元ネタがすぐに判る政宗とかより、ちょっと捻りが有った方が良いだろう?」
 ウッ……確かに。
 だがここで騙されてはいけない。
 伊達政宗の他にも候補はあったのだ。

「それにして……」
「【仮名】のヴィン様~」
 ジルドを問い詰めようと思ったら、受付から呼ばれてしまった。
 ホッとした顔のジルドを一睨みしてから、受付へ向かう。

 お願いしたのはこちらだし、あまり文句を言うのも違う気がする。
 だが勝手に候補を増やしたのに、何もお咎め無しは駄目だよな。
 今日1日無視する程度にしよう。



「豚肉と牛肉と……フレースヴェルグ肉?クラーケン?」
 大量に売りたい食材が有ると告げると、応接室に案内された。
 机の上にトレーを置かれたので、とりあえず全種1個ずつ出してみた。
 それだけで机の上がいっぱいの罠。

「ちょ、よく見てくださいよ!牛肉がポーンブル歩兵雄牛だけじゃなくて、リッチブル成金雄牛もですよ!」
 そうですが何か?
「豚ー!豚肉ーー!金豚!!」
「フ、フレース、フレースヴェルグ」
「クラーケンは蛸の方ですか」

 いや、職員達が怖いです。
 興奮して、涎を垂らしそうな顔で叫ぶ人や、肉に頬擦りしそうな勢いの人。肉を掲げ持っている怪しい新興宗教のような行動をする人。
 鑑定して叫んでいる職員が普通に見えてくる。

「それで、買い取りして貰えるならば、在庫を出し……」
「買いますとも!」
 食い気味に答えられた。
 しかも答えたのは、ここにいるおそらく1番偉い人ではなく、食材を吟味している職員達デシタ……。


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