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価値・無価値は、人によって違うものなのだと再確認した

第466話:そういえば、居たね

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 メイン会場であるふれあい広場の方で歓声が上がった。
 何事かと向かってみれば、俺と同じように向かっている人々が「フォレストディアーが出た!」と興奮したように言っている。

 フォレストは大森林でディアーは鹿だった気がする。
 前にクランの庭で見た、あの鹿を思い出した。
 ふれあい広場の方から、更なる叫び声。
「アップルディアーだ!」
 美味しそうだな、と思ったのは内緒。

 人が多くて俺は埋もれてしまうので、ガルムの背中に乗った。
 と言うか、伏せをしたガルムに登ろうとしたら、通りすがりの衛兵に乗せられた。
 衛兵もふれあい広場に向かう途中だったようで、何となく気不味かったよ。
 俺だけかもしれないが。


 ガルムの上からだと、人垣があってもふれあい広場の中が良く見えた。
 角に葉っぱが生えてる鹿と、花が生えてる鹿と、林檎がなってる鹿がいた。
 あ、新たに転移陣から他の果物がなってる鹿が続々と出て来る。

「ペアーディアーだ」
 呼びにくそうだな。洋梨だっけ?
「チェリーディアーも居るぞ!」
 どれだけ出て来るつもりだ?鹿よ。
 それよりも、クランの敷地内にこれほどの数の鹿がいたのか。
 少なくとも、現時点で四匹居る。

 葉っぱだけの鹿は他より小さいので、子供なのかもしれない。
 あ、もう一匹転送陣から出て来たよ。
 見事な葡萄がなっている。
 皮ごと食べられる高級品種だ!
 美味しそうだ、と葡萄に気を取られていたら、ガルムの笑う気配が伝わってきた。

あるじよ。したり顔でこちらを見ているのがおるぞ>
 葡萄で隠れて見え難いが、グレープディアーの背中にはノロイ(仮)が居た。



 果物鹿達は、ふれあい広場のあちこちでくつろぎ始めた。
 その背中に乗って、角の果物を取り始める属性オコジョ達。
 鹿達も怒りもしないし、嫌がりもしない。
 いつもの事なのだろう。

 頭の果物が全部無くなった鹿がおもむろに立ち上がり、転移陣で帰って行く。
 入れ代わりで実を付けた鹿が入って来た。
 桃だ!桃だからピーチディアーか?


「ちょ、待って!どうしたんだよ、急に!!」
 後ろから焦った声がしたと思ったら、例の1番乗り異界人プレイヤーパーティーが逃げた属性オコジョを追って走って来た。
 人垣が開いて、属性オコジョが駆け抜ける。
 その後ろを走る飼い主達。

 ふれあい広場に駆け込んだ属性オコジョ達は、新しく来たピーチディアーに駆け登った。
 ちょ、可愛いな。
 鹿にまとわりつくオコジョ。

 属性オコジョをまとわり付かせたまま、ピーチディアーが柵まで歩いて来た。
 属性オコジョ達のつぶらな瞳と、ピーチディアーの真ん丸い瞳が、走って来てまだ息も整わない異界人プレイヤー達を見つめる。

「あー。この鹿もペット可ですかね?」
 リーダーの男性が俺に聞いてくる。
「鹿本人が良いなら、別にうちは構わないな。飼っているのではなく、敷地内の森に勝手に住んで居るだけだし」
 じゃあ列に並びます、と言う彼等を、並んで居た人達がこころよく先に広場に入らせた。
 まぁ、もう対象も決まっているしな。

 桃太郎と名付けられたピーチディアーは、属性オコジョ達と仲良く去って行った。
 不動産屋出張所の有料転移陣でクランへと転移したので、あまり感動的なシーンにはならなかったけどな。


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