上 下
463 / 506
価値・無価値は、人によって違うものなのだと再確認した

第463話:自分の仕事には、責任を!

しおりを挟む



 先程俺の所に来たのとは別の衛兵が、列を眺める俺達に近寄って来た。
「あの、責任者の方は」
 俺が手を上げ、悪友達は俺を示す。
 一瞬呆気に取られたようだが、咳払いして用件を話し出した。

「この外の出店は、教会に申請されてますか?」
 いやいやいや、知りませんが。
「うちの管轄は、ムンド……世界蛇ミドガルズオルムの柵の中だけだ。あ、いや、予想外に外に列は出来たが。出店だか屋台だかは無許可だし、知らないな」

 列まではうちが責任を持つが、その更に外側の草原に出ている店までこちらの責任にされたらたまらない。
 コンサート会場の外で売っている無許可のブロマイドやダフ屋まで、主催者に責任取れ!と言っているようなものだ。

 質問してきた衛兵は、大きく溜め息を吐き出した。
「先程、この件を聞きに行かせた者が追い出されましてね。その者から話を聞いている間に屋台が設置されてしまって、営業を開始されちゃったんですよ」
 あ~、あの衛兵は、この件を聞きに来たのか。

其奴そやつは、責任者として名乗り出たあるじかろんじたのだ。当然の報いであろう>
 おぉ。大人しく俺の後ろに控えていたガルムが、ズイッと前に出て衛兵を威嚇いかくしている。
「あ、いえ。責めているわけではありません!」
 顔色を悪くしながらブンブンと顔を左右に振る衛兵。
 目眩めまいがしそうな勢いだな、大丈夫か?


 会場の外の出店は、衛兵が見張ってくれる事になった。
 イベント会場には分類されないので、街の一部として治安維持をする義務があるそうだ。
 これが教会に申請していたら、イベントの一環いっかんになるらしい。

 何となく小さなトラブルは有りつつも、ほぼ準備が整ったな。
 ガルムとヨミ以外の従魔達も、ムンドの上を歩き回り警備を始めている。
 ムンドの鼻先にハナサンとピリリとルチルが居て、並んでいた人達が列を離れてスクショを撮っていた。
 イベントキャラ扱いか?



「そろそろオコジョ達を呼ぶか」
 イベント会場を見渡しながら悪友達に声を掛ける。
 まだ開場には時間があるが、臆病な属性オコジョを雰囲気に慣れさせる為に、早めに呼ぶのだ。
「出入りするのはクランメンバーと、従魔とペット、それからクラン敷地内にいるモンスターで間違い無いですね?」
 教会所属の転移屋に確認される。

 実は教会には、イベント専門の転移屋が所属していたのだ。
 転送する物や人数、場所、期間等、内容によって金額が変わるそうだ。
 今回は場所と転送する ノは固定されているが、イベント時間内は開きっぱなしになる事と、数が多いのでちょっとお高めらしい。

 クラン主催のイベントだから、俺は1F\フェンも出せていませんが何か?


「まずは俺以外のメンバーが森へ行き、自分のオコジョを誘導。その後俺が行き、トレントを誘導。トレントにはなるべくフリーのオコジョを連れて来て貰う」
 皆が頷く。
「その後は、ペットのオコジョ達にお友達を連れて来て貰う、で大丈夫か?」
 最後の「大丈夫」は、転移屋への質問だ。

「基本的に僕は転移陣を開いたら、不具合が無いように見守るだけですからねぇ」
 クラン敷地内側の転移陣は、オーべと一緒に設置済らしい。
「僕もペットとたまむれても良いんですよね?」
 転移屋の視線がオーべに向く。
「仕事に支障無いなら良いよ~」
 何やら約束されていたらしい。
 転移陣の安全対策だけは、お願いします。


しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

継母の心得 〜 番外編 〜

トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。 【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」 氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。 「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」 ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。 成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな

しげむろ ゆうき
恋愛
 卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく  しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ  おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ

処理中です...