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価値・無価値は、人によって違うものなのだと再確認した
第444話:友情とプレゼント
しおりを挟むプーリが下を向く。
プーリの口からテーブルの上に転がり落ちたのは、パステルピンクのカラフル兎だった。
ん?パステルピンク?
俺達の上を旋回していたオパールが降りて来て、咥えていた袋から器用に花飾りを取り出した。
<全く、止めろと言うておるのに>
ガルムが溜息と共に呆れたように呟く。
<しょうがないのじゃ。女子とはそういうものじゃ>
え?ユキが変な事を言ってるぞ。
ヨミとプーリは男の子だよな?
オパールはいまいち判らないけど。
<そのピンクが店の客に、花飾りを贈ってもらう約束をしていたようだよ。本当は欲しいけれど、主が断ったからと隅で落ち込んでいたよ>
リルが皆を代表して説明してくれた。
女の子なのは、このパステルピンクのカラフル兎のようだ。
可愛い花飾りが欲しかったのか。
「一旦本人に返して、店で直接カラフル兎に渡して貰おう。間に【sechs(ゼクス)】が入っていないと客に周知する為に」
溜息と共に提案する。
ここまで欲しがっているのなら、本人の意思を尊重して良いだろう。
「そうね。カラフル兎本人が欲しがっているってのも、皆に見せた方が良いわよね」
ココアの言葉に、同意を示して頷く。
それにしても、この花飾りをくれた異界人は、十匹居るカラフル兎(Pピンク)の中で見分けが付いているのか?
正直、俺には見分けが付かない。
ドーロやアモンやアニンも飾りが付いているから区別しているが、全部取ったら見分けが付かないだろう。
「ピーちゃん、約束の花飾りだよ!」
女性を想像していたのに、男性というか雄だった。
生産職なのに、しかも鍛冶師とかではなく服飾師なのに、なぜリザードマン(蜥蜴)?
まぁ、今はそれは置いておこう。後で聞く。絶対聞く。気になる。
そして先程ふれあい広場でカラフル兎を連れて来る様子を見ていたが、やはりちゃんと区別が付いているようだ。
ピ ーちゃ んに向かって、名前を呼び掛けていたからな。
ピーちゃんは目の前に置かれた花飾りを手に持つと、リザードマンに向かって差し出した。
花飾りを受け取るリザードマンは、返品かと落ち込んでいる。
そしてピーちゃんは、リザードマンに向かって頭を軽く下げた。
尚更ショックを受けた顔をするリザードマン。
しかし、これは謝っているのではなく、付けて欲しいのだろう。
<付けて欲しいようだよ>
見兼ねたリルが近付き、リザードマンに声を掛けた。
一度オーナーに渡したプレゼントが返品されたので、リザードマンに変な先入観があったようだな。
驚いた顔をした後、嬉しそうにピーちゃんを見て笑うリザードマン。
怖い。
ムッチャ怖い。
スマン。
捕食者の笑顔にしか見えない。
微笑ましい光景のはずなのに、ちょっとしたサスペンスホラーだ。
まぁ、無事にピンクの花飾りが貰えたピーちゃんがご機嫌だったから、よしとしよう。
因みに、ピーちゃんは『ピーちゃん』が名前になった。
俺が認識したからだろうか。
ステータスでの表示に
『カラフル兎(Pピンク) ピーちゃん』
と、増えていた。
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