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フラグとは、回収する為にあるのだ……と知った

第428話:大丈夫、大丈夫。皆、仲良く

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 ムンドが口からポロリと卵を落と……そうとして、リルに威圧されてそっと床に置いた。
 渡した時は白だったハナサンが、今では虹色に輝いている。
 これは、リヴァイアサンの皮と同じ色だ。
 いや、表面の虹色がシャボン玉の様に動いているのは気のせいでは無いよな。
 ムンドか?ムンドのせいなのか!?
 ムンド自身が、その時の気分で色が変わる特性があるからな。

「綺麗だね~」
 リヴァイアサンの卵ハナサンをオーベがそっと持ち上げる。
 器用にオーベによじ登ったピリリが、ハナサンに触れようと手を伸ばした。
<ピリリよ、おぬしは触れぬ方が良かろう>
 ガルムから待ったが掛かりましたよ。

<熱くはしていないよ~>
 ピリリが反論するが、ガルムは首を縦に振らない。
火蜥蜴サラマンダーの魔力は、リヴァイアサンとは相反するものだ。お主はまだ制御しきれておらぬだろう>
 おおぉぉう!そうなのか。
 俺にはちゃんと制御出来てるように見えているが、ガルムから見るとまだまだなのか。

<確かにまだ出来ていないね。子供だからしょうがない>
 リルがガルムに同意する。
<ハナサンも、生まれちゃえば大丈夫!おれの魔力で育ったから無敵!>
 ムンドがちょっとお馬鹿な事を言っているが、今回は許そう。
 ピリリがムンドの言葉に頷いてから、ちょっと機嫌が直ったから。
 ちなみに無敵では無いと思う。



 庭に移動して、リヴァイアサン用だという池にいる。
 池……?
 錦鯉とか亀とかがいるような、日本庭園にある池ではない。
 対岸がかろうじて見える湖だ。
 背の高い木々と岩のような物に囲まれている秘境にしか見えん。

 途中で合流した属性オコジョ達が場を和ませているのが、秘境では無いと証明していた。
 最弱魔獣モンスターの属性オコジョは、秘境には居られないからな。
「久しぶりだな、オコジョ達。ちゃんと全員元気にしているか?」
 俺の問い掛けに、一斉に右手を上げる。
 可愛い。

風玉カゼタマ!」
 全員がパッと手を下ろし、一匹だけがハイッ!と手を上げる。
 濃い緑の瞳をしているので、風属性オコジョだな。
 ユズコのペットのオコジョだ。
梨子ナシコ!」
 風玉が手を下ろし、濃い青の瞳をしたオコジョが手を上げる。
 この子は水属性オコジョで、ジルドのペットだ。

 その後も皆の名前を呼んで遊んでいたら、オーベに呼ばれた。
 湖の畔に、ガルムとリルと卵を持ったオーベが居る。
「今から湖にハナサンを入れるよ~」
 慌てて手に持っていた紙をインベントリに仕舞い、湖へ駆け寄った。
 余談だが、持っていた紙には属性オコジョの名前が書いてある。二十匹も覚えられん。


 入れると言っていたが、オーベはハナサンを地面に置いた。
 水から30センチほど離れている。

 コロン

 卵が自主的に転がったように見えた。
 置き方が悪くて転がったのではなく、自力で転がったとしか見えなかった。
 一拍おいて、またコロンと転がる。
 確実に自分で転がっている。
<うむ、大丈夫だの>
<水に入る段階に成長しているようだね>
 ガルムとリルがハナサンを見ながら、満足そうに頷いていた。


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