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フラグとは、回収する為にあるのだ……と知った

第419話:立場と気持ち

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 妙にテンションの高い店内で、ムンドはまだルチルに説教されていた。
 そろそろ解放してくれないかな。
 共犯のリルは知らん顔でふれあい広場で遊んでいる。
<そろそろ良いのではないかの?そもそも其方そなたがさっさと孵化しなかったのが悪いのじゃ>
 ユキがムンドを救出しに行ったようだ。

<何ですって!?>
 ルチルがテンション高くユキに向き直る。
其方そちの飼い主がわらわあるじに相談したのが発端であろう?溶岩の中が気持ち良いからと、いつまでも孵化せずにおった怠け者が!>
 図星なのか、ルチルは反論せずに黙っている。

<そもそもムンドが受け止めなければ、壁にぶつかるか床に落ちるかしておったのじゃ。礼を言うならかく、文句を言うとはとんだ礼儀知らずじゃの>
 ユキねえさん。
 そもそもリルが卵を弾き飛ばしたのが原因なのだが、そこはスルーらしい。

<……ごめんなさい。ありがとう>
 ルチルがムンドに謝罪と礼を言う。
<大丈夫!悪いのは兄ちゃんだし!>
 あ、ムンドがバラしちゃいましたよ。
 だがルチルはリルの方をチラリと見たが、それ以上は何も言わなかった。
 先程ユキに言われた『さっさと孵化しなかったのが悪い』が効いているのかもしれない。


 とにかく、うちの子達とルチルに変なわだかまりが残らなくて良かった。
【ペットカフェ】で常に顔を合わせるし、ルチルもうちのペットのお家に……あっ!
 ルチルをあの転移扉に登録しなきゃいけないのか!
 不動産屋さん呼んで来ないと駄目だよな。
 いや、時間的にもう居ないよな。
 転移扉の登録って住人NPCの店員でも出来るのか?

「こんにちは~!」
 この声は……扉の方へ視線を向けると、予想通りの人が居た。
「あれ?新しい火蜥蜴が増えてますね!」
 わざとらしいな、おい。
「監視でもしてるのか?」
 思わず呟いた。
「たまたま来たんですよ。別件で残業してたんです」
 満面の笑顔が胡散臭い不動産屋さんだ。

「そんな目で見ないでくださいよ~。別件で残業は本当。たまたまは嘘ですけど、詳しくは話せません」
 まぁそういうこともあるのだろう。
 呼びに行く手間が省けたとでも思えば良いか。
「予想外の事か、新しい事が起こるとアラートでもなるようにプログラムが……いや、実はヴィンが監視対象で」
 レイがブツブツ言ってたけど、スルーした。


 ルチルを扉に登録をした後、コーヒーを1杯飲んで不動産屋さんは帰って行った。
 「モフりたい。今こそ癒しが必要なのに!次は客で来る。そしてチーズinハンバーグを食べるんだ。パスタが美味しかったから、ハンバーグも美味しいはず」などと、思いっ切り後ろ髪を引かれながら帰って行っていた。
「お客様で来た事あったかしら?」
 クイーンの呟きに、紫蘭も首を傾げる。

 不動産屋さんは運営としての姿で、プライベートでの異界人プレイヤーキャラを持っているのかもしれない。
 運営を本当の姿でやっていたら、知り合いとかに「融通きかせろよ!」とか言われて面倒な事になりそうだよな。
 特に単なる同級生とか、学生時代に大して仲良くなかった奴ほど、違う立場で会った時に馴々なれなれしくしてくる不思議。
 社会人あるあるである。


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