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フラグとは、回収する為にあるのだ……と知った
第417話:やっちまったなぁ!
しおりを挟む【ペットカフェ】で寛いでいたら、オーナーの一人であるテイマーの紫蘭に声を掛けられた。
俺達の食事がひと段落するまで待っていてくれる、とても礼儀正しい人だ。
ハイエルフの紫蘭は、男なのにとても美人で見つめられるとドキドキする。
話さなければ、だけどな。
女子のテンションの高さなので、話し始めると残念イケメンになるのだ。
「火蜥蜴は生きてるわよね?まだ孵化しないんだけど、大丈夫よね?」
紫蘭の視線がチラリと溶岩槽の方へ向く。
卵を鑑定すれば、生きているか死んでいるか判る……気がする。
いや、判らないか。
俺の場合は、常に卵を抱えて行動していたからなぁ。
溶岩の中にあるから、取り出して触る事も出来ないよな。
これは俺よりオーベでは?
「いやいやいや。そんな目で見られても解らないからね~。うちのピリリ、名付けから孵化まで異様に短かったからね~。どこかの誰かのお陰で」
あぁうちのリルの所為ですね。
火蜥蜴が『熱い』って言いながら生まれてきたからな。
しょうがないからここは従魔達に活躍してもらいましょう!
「とりあえず、溶岩から卵を取り出してもらおうか」
熱い卵を取り出すなら、同じ火蜥蜴のピリリか?
初っ端うちの従魔じゃないという。
いや、テラかムンドでも大丈夫なのか?
<了解したよ>
返事をして溶岩槽へ向かったのは、リルだった。
そうか。リルも溶岩程度の熱など全然平気だよな。
ついついモフモフだから、燃えそうな気がしてしまう。
自分の炎は大丈夫だけど~的な感じだ。
溶岩槽の中に手を入れたリルは、そのままスッパーンと卵を弾き出した。
はい!?
川で鮭を取る熊のような見事さだ。
だが、ここは【ペットカフェ】の店内で、弾き出されたのは灼熱の卵だ。
「リル!?」
何やってる!とか、危ないだろ!とか、馬鹿なの!?とか、言いたい事は沢山あるのだが、名前を呼ぶ事しか出来なかった。
放物線を描く火蜥蜴の卵を皆が呆然と見送っていた。
床が溶けるか、卵が割れるか。
床に落ちるならまだ良いけど、誰かに当たったら……街中だから、死なないか?
<オーライ、オーラ~イ>
フライを取る野球少年か、駐車場の誘導員のような声。
ムンドが飛んで来た卵を口でキャッチした。
思わず俺達だけでなく、店内のあちこちから拍手が起こる。
パキッ
<あっ>
ムンドの口の中で、卵が割れた音がした。
ムンドも感触があったのだろう。『あっ』って声出したし。
ヤバいって顔してるしな!!
もう、何してるの!?神話兄弟!
紫蘭は顔から表情消えちゃってますけど!?
<え?ちょっと!生まれた瞬間にヨルムンガンドの口の中ってどんなプレイ!?>
ムンドの口の中から、テンション高めの声がしてきて、ちょっと……いや、大分ホッとした。
そして口の中に居るのに、ヨルムンガンドって判るのか。
何にしろ、生きていて良かったです。はい。
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