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フラグとは、回収する為にあるのだ……と知った
第406話:我が意に……
しおりを挟むちょっと質の良い割り箸の太さのトレント。
竹で出来ている割り箸。それより少し太いくらい。
横に突き出ている枯れ枝は、多分腕かな。
顔は子供のイタズラ描きのようなシンプルさだ。
丸い目にちょっと盛り上がった鼻、波線の口。例えるなら出来の悪いハロウィンランタンのような顔。
ずっと見ていると、可愛く見えてくるから不思議。
言いたい。凄く言いたい、あの台詞。
だが言ってしまって、現実になると困るから言えない。
『我が意に従え、テイム』
言ってしまいたい。
いや、他人様の家のものだから、テイムは出来ないか?それなら言っても大丈夫?
うちのクランの敷地内にいた属性オコジョみたいな扱いなのだろうか。
それだとテイム出来そうだな。駄目だ。
<きゅ?>
俺の胸元で寝ていたはずのヨミがトレントの居る植木鉢に近付き、フンフンと匂いを嗅ぎ始めた。
<きゅきゅ?>
可愛く俺を見上げて首を傾げるが、頷いてはいけない気がする。
<ヨミよ。街中の魔物はみだりに食べてはならぬと言われたであろう>
頷かなくて良かった!
ガルムに注意されたヨミは、足ダンをしてから俺の胸元へ戻ってきた。
所有権が無いから、食べても良いと思ったのかもしれない。
倒すとドロップアイテムになる魔物。なのに『食べて良い?』と聞くという事は、もしや活け造り的な……。
スライムを食べるのと同じ感じなのだろうか。
「我が意に従えテイム!」
突然、店の中に例の台詞が響く。
声の主は紫蘭。
驚いて見上げると、ニヤリと笑った顔と目が合った。
「やっぱりダメよねぇ。従魔と仲良くなりたいのに『我が意に従え』って変よねぇ」
殊更大きな声で、態とらしく説明台詞な紫蘭。
え?何この寸劇。
そもそも紫蘭は、この三匹のうちのどれに向かって言ったのかも謎。
「ねぇ、アルラウネ。うちの子にならない?美味しいものいっぱい食べられるわよ」
アルラウネ、口が無いけど物を食べられるのだろうか?
植物と認識してたよ。
「うちには火蜥蜴のルチルもいるのよ。まだ卵だけど、もうすぐ生まれるの!」
紫蘭がアルラウネを勧誘するが、火蜥蜴とアルラウネって相性悪く無いか?
溶岩と木だよな?
両方従魔になれば、双方傷付かないけど。
結局アルラウネは、紫蘭の勧誘に首を横に振った。
紫蘭は「まだ諦めないわよ!」と闘志を燃やしていた。
トレントとマンドラゴラは、彼女の琴線には触れなかったらしい。
マンドラゴラは葉っぱしか見えてないのでしょうがないか。
この日以降、植木鉢に立て看板が付いた。
『アルラウネ テイム出来た人について行きます』
『トレント テイムでもペットでも可 ただし植木鉢ではなく、地植え出来る人』
『マンドラゴラ 意思疎通出来る人』
トレントなどすぐに引き取りてが出来そうだが、トレント自体が了承しないらしい。
条件『地植え』だけなのに?
そう思っていたら、トレントの立て看板の内容が変わった。
『トレント テイムでもペットでも可 ただし植木鉢ではなく、地植え出来る人 美味しい水をくれる人』
どうやらリルのあげていた水が忘れられないらしい。
うちの畑の側に植えれば問題解決だが、言わないでおこう。
これ以上、従魔もペットも増やす気はないからな。
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