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可愛いを独り占めするのは、心苦しく思います……ので
第395話:フラグとは、本人は気付かないものだ
しおりを挟むペットカフェで美味しいチーズinハンバーグを食べた後、デザートの苺パフェを食べている。
1番上の良い苺は、ヨミにあげた。
この苺、正確には魔物苺でヨミの好物になったようだ。
喋ったり歩いたりはしないが、顔がある。可愛い顔ではない。
濃いオッサンの顔だ。
他は何も無い。何も無いから見ないようにすれば、普通の苺の倍は美味い……らしい。
因みに甘さで表情が変わるので、美味しい苺は笑顔だ。
魔物野菜だけでなく、魔物果物もあったのか。
もしかして、品種改良で作り出したのかもしれないな。
いつまでも、それこそ調理された後もうるさい魔物玉蜀黍と、顔があるだけだけど、その顔が濃いオッサンだという魔物苺。
どちらがマシだろうか?
……うん。どちらも嫌だな。
ペットカフェのふれあい広場には、前には無かった木が置いてあった。
特殊な加工がしてある、カラフル兎達にも登れる木だ。
高さはあまりなく、ガルムの体高よりも低い。
これは、プーリやオパール用の止まり木なのだろう。
うちのペットのお家にある止まり木とよく似ているから、爺さんと斗苫斗的の合作なのかもしれない。
そして、フロアの端にこっそりとある特殊空間。
溶岩を流し入れても大丈夫な水槽。この場合、溶岩槽って言うのか?
あのプレオープンの日。紫蘭がピリリを拉致して設計した火蜥蜴孵化器だ。
会話が出来る火蜥蜴が目の前にいれば、そりゃ孵化に適した環境とか聞くよね。
今は紫蘭の火蜥蜴の卵が入っている。
しかし、まだ孵化しないのか。
リルの炎が如何に規格外か判るな。
溶岩槽にピリリとムンドがいそいそと入って行くのは、止めた方が良いのだろうか?
まるで温泉に入って行くカピバラのようだが……。
幸せそうだから、放置の方向で。
「ムンド、体が熱い間は他の子に触っちゃ駄目だからな」
溶岩に浸かってくつろぐムンドに注意する。
熱くなったムンドに触れたら、うちの小さなカラフル兎では蒸発しそうだ。
<もう少し温度を上げた方が早く孵化するのではないかい?>
溶岩槽を覗き込んだリルの口の中に、青い炎がチラリと見える。
「うわぁ!ダメダメダメ!耐えられない!さすがにその温度はスライム板が耐えられないから!」
紫蘭が驚きの速度で走って来て、リルと溶岩槽の間に立ち塞がった。
「いくら高温耐性が付いてたって、フェンリルの炎は無理よ!」
両手を広げて立ち塞がる紫蘭。
うぅん。ここで中の溶岩が流れ出したら大惨事だから、リルに絶対にやらないように念を押しておこう。
カフェの中に、何も植わっていない植木鉢が何個か置いてあった。華やかなリボンで飾られていたのだが、カフェだからだと気にしなかった俺。
これから何か植えるのかなぁなどと呑気に思っていたのだが、後日、スルーした事を俺は後悔する事になる。
植木鉢には、種が植えられていたのだ。
それが爺さんからの開店祝いだったと知っていれば、うちの子達に「絶対に何もするな」と注意したのに!
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