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可愛いを独り占めするのは、心苦しく思います……ので

第374話:正しい説明求む

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「あれ~?皆来てたのか~」
 ピリリの部屋の扉が開いて、中から出て来たのはオーベだった。
 綺羅と斗苫斗的も知らなかったらしく、普通に驚いている。
「え?人を招いておいて、何してんのよ」
 咲樹が珍しく正論でオーベを責める。
 いつもは逆なのに。
「いや、ピリリの部屋を改良してたら、気付いたら大分時間が経ってた」
 あぁ、そういうところあるよね、オーベは。集中し過ぎて周りが見えなくなるの。

「僕達は勝手に入ってカラフル兎達と遊んでたので、問題ないです」
 斗苫斗的が良い笑顔で、手の上のカラフル兎を愛でる。
 ポケットの中とかに忍ばせて持って帰りそうだな。
 要注意だ。
「持って帰らないよ!?世話できないからね!」
 あ、表情で思ってる事がバレたらしい。
 斗苫斗的が必死に言い訳してくる。
 それは、世話できたら持って帰るって事で……そもそもイベント終了時にペットで残してるか。


「オーベさん、これ、頼まれた物です」
 手に持っていたカラフル兎達をそっと床に置き、謎の機械を手に持つ斗苫斗的。
「おぉ!ありがとう」
 受け取ろうとしたオーベを遮り、咲樹が機械を横取りする。
 咲樹推しな斗苫斗的は、横から咲樹が手を出せば、そっちに渡してしまうよな。
 色々駄目だとは思うが、気持ちは解る。

「何これ?」
 判らないなら奪うなよ、咲樹。
「簡易結界?温度調節?」
 オーベ?全然違う能力だよね、それ。
「直径1メートルの範囲にピリリしか入れなくなって、中の温度は外に漏れないようになってます」
 製作者の斗苫斗的が、正しい能力を説明してくれる。
 結界、だよな。普通に。

「あと、溜め込んだ熱を動力にして、指定した範囲を温めます」
 温める?常春な『しきしま』で?
「因みに今設定してあるのは、魔物野菜畑です」
 あぁ!前に魔物蕃茄トマトだか胡瓜キュウリだかが『あともう少し暖かいともっと美味くなれるのに』とか愚痴ってたって、ジルドに聞いたな。

「今までピリリが熱発散するから部屋に何も置けなかったんだけどさ~。が来たら大丈夫だから、色々置いてたんだよ~」
 ピリリは火蜥蜴サラマンダーだから、定期的に炎を発散?させるらしい。
 青白い炎を全身に纏ったピリリは、軽く兵器だ。自室以外でやったら、間違いなく火事になる。
 しかも灰も残らないレベルの高温で。
 その為、ピリリの部屋だけは、溶岩にも耐えられる耐熱設計だ。

「今まで誰も自分の部屋へ招けなかったのか。それは寂しかったな」
 皆と仲良く話しているピリリを見る。
 ちょっと同情していたら「え~?違うけど~?」とオーベに否定された。
「違う?」
 何が?
「ピリリの部屋、ムンドとテラは入れるけど~?炎出してる時にわざわざ入って、我慢比べとかしてたけど~?」
 はい!?何してるの、うちの爬虫類コンビ。

「あ、それなら結界の中に入れるように、テラとムンドを指定しないとですね」
 当たり前のように言ってる斗苫斗的を思わず睨む。「だからピリリの大きさの割に範囲が広いのか」などとブツブツ言って納得している。
 何すんなり受け入れちゃってるわけ?
「前は中で倒れたらリルが迎えに行ってたけど~、これからは結界から這い出るだけだから大丈夫だね~」
 リルまで何をやってるわけ!?
 まぁ、仲良く遊んでいたようなので、良しとします。



────────────────
ピリリはオーベのペットなので、従魔達にも普通に熱が通ります。
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