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可愛いを独り占めするのは、心苦しく思います……ので

第370話:勘違いも甚だしい

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「どこにでも居るよなぁ、虎の威を借る狐」
「おい、やめろよ」
「なんで?ホントの事だろ?クランの力で強力なモンスターテイムしたって、どうせ命令なんて聞いてもらえてないさ」

 野次馬ギャラリーへと視線を向けるも、声はすれども姿は無し。
 面と向かって言う根性は無いので、人垣の中から聞こえよがしに言っているようだ。
 おそらく、いつもどおりガルムがいたら、何も言わなかっただろうな。
 こういう場面に遭遇すると、普段自分がどれだけ守られているのか実感する。
 ガルムしかり、悪友達然り。

 そして俺は知っている。
 こういうやからは、無視するに限る。
 伊達に学生時代から悪友達と仲良くしていないからな。
 経験則ってヤツだ。
 馬鹿は無視して話を進めようと、タコ焼き屋のお姉さんへと向き直り……

あるじにわざわざ命令されなくても、望んでる事が判るんだよ!馬ぁ鹿>
 ああぁ!!もう一匹いたわ!護衛!
 こういう場面で嬉々として反応するヤンキー気質な従魔が!
 そして、俺の望んでいる事など、微塵も理解してないだろ?ムンドさんや。

 俺と野次馬ギャラリーの間に突如現れた巨蛇。
 蛇?手足も羽も有るけど、ムンドって蛇だよな?
 確か世界蛇って名前だったし。
 声のした方角を威嚇するムンド。
 3メートルサイズに抑えた事を褒めるべきか、突然出て来た事を叱るべきか。
「ムンド、タコ焼き買ってやるから戻って来い」
 どちらもやめる事にして、懐柔作戦にする。
 左手を上げて、ここへ帰って来いアピールをした。



 15センチサイズになったムンドが、美味そうにタコ焼きにかぶり付いている。
 ヨミとテラも器用に両手でタコ焼きを持ち、マクマクと食べている。
 眼福。
 食べているのは、タコ焼きはタコ焼きでも『クラーケンタコ焼き』だ。
 限定品として、通常の倍の値段で売り出すそうだ。
 相変わらず商魂逞しいな。嫌いじゃないぞ。
 先程の騒動のお詫びも兼ねて、もう10サク渡しておいた。
 お土産としてタコ焼き15箱になって返ってきちゃったけど、微々たる量だと思いたい。
 1冊も使ってないよな?


 俺に嫌味を言った異界人プレイヤーは、周りから人が居なくなり、その姿を晒す事になった。
 それなりのクランの、それなりの冒険者らしい。
 タコ焼き屋のお姉さん情報。
「【sechs(ゼクス)】に喧嘩売って大丈夫なんかね、アイツら」
「大丈夫だろ。友人達だって、誰彼構わず制裁はしない」
 絶対しないとは言わないが、あの程度ならスルー案件だ。

「【sechs(ゼクス)】本人達が何かするとは思ってないわ。怖いのはファンやで」
「有名でコアなファンが居るのは【cinq(サンク)】で、【sechs(ゼクス)】じゃないぞ。俺を含めるなよ」
 何か変な顔をされた。
 可哀想なモノを見る目と言うか、残念なモノを見る目と言うか、とにかく失礼な表情だ。
「まぁ、別に良いんちゃうか」
 会話が強制終了したので、周りの屋台へとお詫びの品を配りに行く事にする。

 店主達があまりにも恐縮するので、逆に申し訳ない気持ちになった。
 恐縮って言うか、迷惑だったのかもしれないと思い至ったのは、クランハウスに戻ってからだった。
 クラーケンもリッチブルも、ここ特有の食材だから、練習も兼ねてる料理人には無用の長物だよな。
「家宝にします!」とか言ってたのは、遠回しな調理しない宣言だったのか。



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甚だしいは、『はなはだしい』と読みます。
題名はフリガナ付けられないので^ ^
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