上 下
363 / 506
タマゴはタマゴ 夢見るタマゴ 頑張るタマゴ

第363話:愛されてる?

しおりを挟む
 


 超小狼姿になったリルが膝の上、ネルの横に乗って来た。
 今のネルはブーツを履いていないので、見た目は完全に普通の猫だ。
 膝の上で丸まる猫最高。
 そしてそれにくっついているリル。
 胸元にはヨミ、フードの中にはテラ。
 ガルムに埋もれている俺。

 更にはシズカとユキも寄って来た。
 二匹は他に比べるとちょっと大きいので、俺には乗らずに両脇にくっついてくる。
 うぅん。現実リアルだったら、夏にこれだけの動物に囲まれたら至福だけど地獄だろうな。
 まさに天国と地獄。
 数が足らない……と思ったら、プーリがムンドに絡め取られていた。

「ちょ!何やっ……ん?」
 ムンドを叱ろうかと声を出したが、よく見るとプーリが楽しそうだ。
 プーリをグルグル巻きにしたムンドは、微かに浮いていた。
 体に幾重にも巻き付いているのは、一ヶ所に負担が掛からないようにの配慮のようだ。
 観察してみると、プーリの体とムンドの体の間には、落ちない程度の隙間がちゃんとあった。
 皆、ちゃんと仲良く出来そうでなにより。
 んん?これがスキルの恩恵?
 逆?皆がすぐに仲良くなるから、スキルが生えたのかな。



 コツコツコツ。
 どこかから固いものをぶつける音がする。
 好き勝手に飲み食いし、そろそろお開きにしようと皆でダラけていた時にそれは聞こえて来た。
 とても小さい音で、俺以外には聞こえていないようだ。
 周りはリッチブルの料理の話で盛り上がっている。
 追加で作られたテールカレーも、恐ろしい速さで空になっていったな。
 余談だが、フレースヴェルグの肉は美味かった。
 シアラのあのタレは、確かに鳥系の方が更に美味いと思った。

「どうした?ヴィン」
 キョロキョロと周りを見回していた俺に、ジルドが声を掛けてくる。
 うん。お前がどうした。
 俺の視線の先には、黒い犬のフード付き着ぐるみを着ているジルド。
 レイと違って自前の耳も尻尾の無いので、ツナギではなく本当に着ぐるみだ。

 俺の視線と表情に気付いたのだろう。
 ジルドが自分の服装を見てから、俺を見る。
「これは、クランハウスの中で着ようと思ってな。綺羅が作ってくれた」
 そうですか。別に個人の自由だから良いと思います。
「で、ヴィンはどうした?キョロキョロしてただろ?」
 あぁ、そうだった。
 ジルドの黒犬着ぐるみが衝撃的過ぎて、一瞬忘れてたわ。

「いや、何かコツコツと固いものをぶつける音が聞こえた気がしてな」
 ジルドの質問に答えると、右側から腕を引かれた。
 ユキだ。
<主殿。それはもしや、八咫烏オパールが殻をつついている音ではないかのぅ>
 は?殻を突いている?
「それって産まれるって事じゃないの!?」
<まだ殻に穴さえ開けられておらぬのじゃから、当分先なのじゃ>
 否定はしないのね!

「レイ!産まれる!」
 八咫烏の卵オパールの本来の持ち主であるレイを呼ぶ。
「え?ヴィン、妊娠してたの?」
「レイが父親って事!?」
 ココアとミロの甘味コンビは無視する。
「ヴィンを孕ませた記憶はありませんよ」
 レイがお馬鹿二人にキッチリとをする。
 アイアンクローを喰らった二人はとても痛がっていた。セーフ機能オフ過度な接触OKな二人だから、さぞかし痛かろう。

 いや、違う。お馬鹿二人は良いから!!
 お前の子なのは間違いではないからな!


しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

継母の心得 〜 番外編 〜

トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。 【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」 氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。 「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」 ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。 成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな

しげむろ ゆうき
恋愛
 卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく  しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ  おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ

処理中です...