ほんわりゲームしてます I

タマゴはタマゴ 夢見るタマゴ 頑張るタマゴ

第343話：久しぶりと初めまして

　



「皮・が無いとなんだか判らないものなんですね」
　冊サク状態のクラーケンを手に、綺羅が呟く。
「醤油を塗って炙り焼きじゃ！酒のツマミじゃの！」
　爺さんタカアシガニが飲兵衛らしい事を言う。
「煮物、蛸飯、タコ焼き、酢の物、タコ唐、タコ天。煮て良し焼いて良し炒めて良し。うふふふふふ」
　斗苫斗的ととまとまとが壊れた。


　なぜこのようになったのか。
　状況説明には、少し前に時間を遡る必要がある。

　悪友達が忙しくクラーケンを配るのを横目に従魔をモフモフ愛でていたら、俺の前にも人が来た。
「サボらないで配ってください。ヴィン」
　声を掛けて来たのは、笑顔の斗苫斗的だ。
　余程俺が驚いた顔をしてたのか「掲示板で話題になってますよ」と教えてくれたのは、綺羅だった。
「生産者は情報が命じゃからのう」
　フォフォフォと水戸の御老公の様に笑っていたのは、爺さんだ。
　三人分のクラーケンを取って来て渡し、冒頭に至る。


　ウハウハしている三人の後ろに、更に人影が……
「クラーケンが討伐されたって本当だったのね！」
　今日も素晴らしいオネェ感なココアだ。
「なんか掲示板では『さすが【cinq（サンク）】』とか書かれてるけど、狩ったのヴィンっしょ？」
　ニヤリと笑っているのは、ミロ。既に御狐様を連れている。
　御狐様、ヨダレ！！！

　ミロとは別に、御狐様にも１個渡してあげた。
　ミロの策にまんまと乗ってしまった気がするが、幼女が指を咥えてヨダレを垂らしていたら、とりあえず渡すよね？
　ココアのチームメイトは来ていないのか。
　馴れ合わない！とか宣言してたからな。
　ミロと御狐様とココアの影に、またしても人影。


「何してんのよ！クラーケンって何！？」
　いきなり罵倒ばとうから始まったのは、リコンスだ。
　リイドにすかさず拳骨されてるけどな。
　そして、リイドの横に獣人狼？人狼ワーウルフ？
「はじめまして。魔族人狼ワーウルフのシアラです。いつも主人がお世話になってます」
　深々と頭を下げられた。

　彼女？だよな？獣人と違って、顔も狼だから性別がイマイチ不明。
　妻って名乗ったから、女性で良いか。
　彼女は通常『美暴食街』に入り浸っているのだそうだ。
「クラーケンが貰えるって聞いて、初めて『むつきしま』まで来ました」
　ニコニコと言う彼女の横で、リコンスが疲れた顔をしている。
　３・度・目・のボス狩りをしたのか。

　良かったじゃないか。
　２回目はうちの子達が瞬殺してしまったから、ちゃんとしたボス狩り出来て。
「お前がクラーケンなど狩るから」
　怨嗟えんさのように呟かれた。
　睨まれてもなぁ……俺のせいじゃ無いし。

　それにしても、皆、情報早いな。

　綺羅、爺さん、斗苫斗的は、生産者系の掲示板で見てきたらしい。
　リコンス達は、シアラが珍しい食材の情報板を見たそうだ。
『美暴食街』に入り浸っているだけあって、シアラはスキル［料理］を持っていた。
　しかも中々の高レベルらしい。
　やったね！