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第334話：職人魂？

　


＜こんにちはにゃ＞
　ガルムの上で遊んでいたスピネルを呼ぶと、四つ足で歩いて来たのに、立ち上がって頭を下げて挨拶をする。
　可愛い。可愛いけど、何かが違う！
　『長靴をはいた猫』をイメージしていたけど、二足歩行はしないのだ。
　それならなぜブーツを履いている？と思ったが、動物の猫とケット・シーを区別する為なのかもしれない。

「可愛い！洋服着る？ヨミちゃんとお揃いの服もあるよ？」
　綺羅がスピネルの前にしゃがみ込み、可愛い服を懐から出した。
　実際はインベントリから出しているのかもしれないが、懐から出したように見えた。

　確かに前に綺羅からヨミの服を貰っている。
　最近はクランハウスの中でしか着ていないので、部屋にマジックボックスを置いてその中に入れてある。俺がいなくても、誰かがヨミに着せる事が出来るようにだ。
　てか綺羅よ。お前、ヨミをちゃん付けで呼んでいたのか。


　ん？スピネルが困ったように俺を見上げてきているな。
「スピネル？別に嫌なら断っても良いぞ」
「え？嫌なの！？」
　スピネルより先に綺羅が反応する。
　うるさいぞ。
＜い、嫌じゃないにゃ！貰って良いにゃ？＞
　遠慮していたのか。

　綺羅が持っているのは、フード付きのコートのような服だ。
　ヨミのはポンチョなので、少し形が違う。
　お腹が丸見えなのは、四つ足になった時に邪魔にならないように短いからだろう。
　色は淡い水色。
　顔と手先が白くブーツも白で、本体は紺色なスピネルに、とても似合いそうではある。

「意外と性能盛ってみました！防汚、防炎、防熱、防寒は勿論、物理耐性と魔法耐性も付いてます！」
　え、それどこの高性能防具？オシャレ着じゃないよね。
　ましてや、従魔に着せる服の性能じゃないよね？
　いや、差別じゃなくて常識としてね！

「サイズ変更にも多少は対応してるから大丈夫！」
　綺羅が自信満々に言う。
　ヨミがサイズ変更しちゃうので、街中でしか綺羅の服が着られないのがよほどショックだったのか？
＜我も着られるのかい？＞
　あ、リルが興味を示しましたよ。
「それが、１番最小から最大までは無理でした」
　とてもとても残念そうな綺羅。
　もしかしてこの服、リル用に作ったのか？
　リルもちょっと残念そうにしている。

　でもさ、リルさんや。よく考えて？
　ガルムより大きい上に目や口から炎出してるリルが、ヨミとお揃いの可愛いデザインの服を着てたら駄目だろう？
　敵も笑えば良いのか、怯えれば良いのか、本気で迷っちゃうと思うよ？

＜フェンリルじゃあるまいし、サイズ変更なんてできないにゃ！＞
　呆然と綺羅とリルのやりとりを見ていたスピネルが、我に返ったのか急に叫ぶ。
　そうか。ケット・シーはサイズ変更出来ないのか。
　俺の胸元で、顔と手をちょこんと出しているヨミの頭を撫でる。

「ヨミもサイズ変更出来るぞ。まぁ、１番凄いのはムンドだけどな」
　虫のようなサイズから、大陸を囲うサイズにまで成れるらしいからな、ムンド。
「ムンドのサイズ変更に対応できる物が作れたら、間違いなく世界最高の錬金術師ですよねぇ」
　今まで空気だった斗苫斗的が呟く。
「ムンドのチェーンは縮小しか付与できなんだからのぅ」
　爺さんも宙空ちゅうくうを見ながら呟く。

　俺からしてみれば、３センチになったムンドの頭に違和感なく載っていたチェーンとクラン証も充分凄いけどな。
　そう考えれば、クラン証も体の大きさに合わせて、ある程度サイズ変更されるな。
　え？クラン証凄いな。