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タマゴはタマゴ 夢見るタマゴ 頑張るタマゴ

第331話:少しは変わる……えぇ!?

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 怒りに任せて闘気だか殺気だかを出していたリルだが、冷静な部分も残っているようで、サイズは小狼のままだった。
 威嚇され微動だに出来ない冒険者達から離す為、リルを抱き上げる。
「リルさんや、落ち着きなさい」
<きゅきゅぅ!>
 胸元のヨミも同じ意見なのか、服から手を出してリルの頭をポンポンする。
 か、可愛いな。

「おい、何があった?ユキが呼びに来たぞ」
 リル以上の殺気を纏ったジルドが店内に入って来た。こちらは闘気ではなく、完全な殺気だ。
 何があった?とか言っているくせに、リルと入れ替わりで出て行ったユキから詳細を聞いて知っているのだろう。
 ヨミのお陰で一瞬和んだ空気も、更に倍!なレベルで凍りついたよ。
 もう、この混沌カオス状態はどうしたら良いわけ?


「何かございましたか?」
 場にそぐわないおっとりとした口調で声を掛けられた。
 矢羽が並んだような柄の着物を着た上品な女性だ。
「わたくし、【桜屋】の女将おかみでございます」
 優雅に頭を下げられた。

 女将に案内され、店の奥にある応接室へと移動する。
 えぇぇえ。俺としてはここまで大袈裟にするつもりは無かったのだが……
 女将を鑑定すると、先程の店員が言ったとおり住人NPCだった。

 応接室には既にレイとガルム達が居た。
 店内を通るより外を回った方が直線で早いのだと、レイ達を呼びに行った店員が教えてくれた。
 俺達は上座へ案内され、お洒落なソファに座らされる。
 ジルドの目がキラン!と光ったのは、気のせいでは無いだろう。
 ソファなのに和柄で、でも違和感が無くて、ジルドの部屋に合いそうなデザインだ。


 冒険者五人は、扉を入ったすぐの所へ並んで立たされている。
 現実リアルの店ならクレームものだが、そこは幻想世界ファンタジーワールドですから。
 俺達が出されたお茶とお菓子を平らげるまで、女将の説教は懇懇こんこんと続いた。
 内容としては、他人の従魔に対する礼儀や態度、単なる魔獣モンスターと従魔の違いなどだ。

「自分がされて嫌な事は、他人ひとにしてはいけません。自分の従魔に傷が付いても平気だと思えるなら、テイマーになる資格はありません」
 強い口調でのこの台詞で説教が終わった。
 その後、女将にうながされ、冒険者達が謝ってきた。
 嫌々ではなく、本当に反省しているようなので受け入れた。

 五人のうちの三人は、前に綺羅の店の前でリルに絡んだ冒険者だった。
 まだ幻想世界ファンタジーワールドを始めたばかりで、前にやっていたゲームの感覚が抜けきれていないらしい。
 意味がよく解らないのだが、モンスターと会話出来ても意思の疎通は出来ない、とか。
 本当に意味が解らない。
 会話出来るのだから、意思の疎通もできるよな?


 あ、それから払った代金以上の返金がありました。
 迷惑料だそうです。
 お店は関係ないからと断ったのだが、店内で起こった事ですからと押し切られた。
 職人達にはちゃんと代金は支払われますよ、と笑顔で言われた。
 それは良い事だが、そうじゃない。
 そこじゃないのだ。

 俺が買物をした事実が取り消された気がするのだが……?
 支払いしてないのと同じだよな!?
 冒険者五人アイツ等許さなければ良かったよ!!



________________
矢羽の柄は、正式名称は『矢絣(やがすり)』と言います。

綺羅の店での話は、正月カラフル兎の時です。
217~218話です。
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