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タマゴはタマゴ 夢見るタマゴ 頑張るタマゴ

第329話:不安・ファン・風呂敷

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【桜屋】の店員は、半分転がるように店の奥へと走って行った。
 そして両腕に沢山の風呂敷を抱えて戻って来る。
「て、店頭には出してないのでしゅが色々ありましゅ」
 まだ噛むか。そして早口で息継ぎしないから聞き取り難い。
 とりあえず落ち着け。

 カウンターの上に置かれた風呂敷を見ると、桜と一緒に色々な動物が描かれていた。
 お、白狐発見。
 桜吹雪の中で優雅にくつろいでいる。
 これは、白い狼か?桜の色が青白いから、夜桜なのかもしれないな。

 白い鷲!格好良いな!
 でもプリンは黄色い可能性が高いよな。
 お、白虎がある。これはユズコに買ってやろう。
 火蜥蜴サラマンダーまで!
 しかもなぜかピリリと同じ青白い炎バージョンだ。
 思わず店員を見ると、サッと目を逸らされた。
 もしや、本当にピリリがモデルなのか?
 さっきの白い狼も所々グレーなのは影かと思っていたが、実は銀狼をイメージしているのか?
 そりゃあ噛み噛みになるよな。
 間違いなく【cinq(サンク)】のファンだろ、きみ

 ライオンとか白猫とか鶴とか、さっきの白い鷲とか、【cinq(サンク)】と関係ない動物も多いから、真面目に商品を作ってはいるのだろう。
 別に被害があるわけじゃないか良いけどな。


 最終的に選んだのは、白ウサギ、白狐、白虎、火蜥蜴、白狼?の5点だ。
 あとは全然関係のない桜の花弁はなびらの小皿。小鉢になるのか?少し深さがある。
 5枚並べると桜の花になる。
 これは、ジルド用だ。
 部屋に飾って欲しいから、つい買ってしまった。
 俺の予想では、ジルドなら中にカラフル兎を入れて写真を撮るはずだ。
 画像を回してもらおう。

 ギルドカードを出す。
 冒険者ギルドカードだ。
 クランの支払いカードでも、レイのギルドカードでもない。
 店員がカードを受け取り、スッと支払いの機器にかざす。
 ピッと電子音が響いた。
 とても小さな音だったのに、俺の中では途轍とてつも無く大きく響いた。

 支払いが出来た!
 初めて自分で物を買ったよ!
 おつかいに来た子供か!!って感じだけど、今まではなぜかお金を受け取って貰えなかったからな!
 まぁ、20,000F\フェンだがな。
 円換算で2,000円だ。
 残高がほぼ変化無しに見えるが気のせいだ。
 てか、安いな!

「桜小鉢は1個3,000F\で、風呂敷は1枚1,000F\です」
 え?安過ぎないか?特に風呂敷。
 俺の疑問が顔に出ていたのだろう。
「実はこのお店の商品は、私のような職人のタマゴの物ばかりなのです」
 店員が説明をしてくれる。
 風呂敷を作った彼?彼女?は、着物などの柄を描く『手描き職人』のタマゴだそうだ。
 桜小鉢は、陶芸家のタマゴの作品らしい。

現実リアルでは、まだ商品を売る許可が師匠から出てないのですが、幻想世界ファンタジーワールドでは出ているので」
 モチベーションって大切ですから、と店員は笑う。
 VRMMOだからか、色々な目的でログインしている人がいるのだな。

 興味本位で風呂敷を鑑定。
 風呂敷は防汚が付与されてますので、安心して使えますよ!
 ペットのお洒落にも最適ですね!
 などと、頭の中で勝手に通販番組のコメントが流れた……気がした。


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