上 下
327 / 506
タマゴはタマゴ 夢見るタマゴ 頑張るタマゴ

第327話:粋(いき)だね

しおりを挟む
 


 スピネルを従魔にしてしまった為、一旦クランハウスへ戻る事にした。
 ギルドへの登録と、従魔の証であるクラン証を入手しなくてはならないからな。
 あ、爺さんタカアシガニは今『むつきしま』に居るのか。
 鎖は後からで良いか。

 あぁ!綺羅も『むつきしま』に居るのか!
 シズカ用の八咫烏の卵オパール入れを作成依頼しようと思ってたのだが、駄目だな。
 これは急を要するから、待てないよな。
 どこか近くの街に行って、そこで買うか。
 そのままクランハウスへ戻ろう。

 1番近い街は『南東の街』になるらしい。
 ジルドいわく「1番海の街らしい」との事。
 海の家や漁師が?と期待したが、そこまで海に近くはないそうだ。
 海で遊ぶ為の玩具が売っているそうで……浮き輪とかゴムボートとかか?
 まぁ、とにかく行ってみる事にした。


 門番の淡々とした対応が逆に気持ち悪い。
 いかにトラブルに遭っていたかって事だな。
「数が合いませんね。少ないのではなく、多いです」
 そりゃそうだ。
「この猫は、さっき従魔になった。その登録の為にこの街に来た」
 俺の説明に門番は「なるほど」と頷くと、1人の衛兵を呼ぶ。
「登録が証明されてないと自由に動けません。まずはこの者と一緒に冒険者ギルドへ行くように」
 呼ばれた衛兵が俺と目が合うと黙礼してくる。
 統率された軍って感じで格好良いな。

「こちらです」
 冒険者ギルドの場所を知っているかなどの質問もなく、衛兵が先に立って歩き出す。
 横柄な感じもなく、本当にという感じだ。
 ちょっとした悪戯いたずらごころもあって、話し掛けてみる。
「従魔の卵を入れるものが欲しいのだが、どこで売っている?」
 チラリと俺を見て、また前を向いた。

 無視か!?と思ったら、そのまま返事をしてきた。
「卵の大きさか、判っていれば種族は?」
 仕事中だから、馴れ馴れしく話せないのかもしれない。
「八咫烏の卵だな。シズカ…月兎げつとが持てるようにしたい」
 衛兵が今度はシズカをチラリと見る。
「冒険者ギルドの近くに雑貨屋が何軒かある」
 それ以上は贔屓になるのか、答えてくれなかった。


 冒険者ギルドに到着して、衛兵に見守られながらの登録になった。
 ここまで厳しいのは初めてだ。
 それだけ『むつきしま』の規則がしっかりしているのだろう。
 ギルドカードを受け取り、真面目に虫眼鏡の購入を考えた。
 字が小さい!

 ギルドを出た所で衛兵が軽く頭を下げてくる。
 自分の仕事は終わったので、門へ戻るのだろう。
 姿勢を直す寸前、俺にだけ聞こえる小声で「おすすめは【桜屋】です」と呟いた。
 微かに口元が笑っている。
 敢えてお礼を言わず、笑顔で手を振った。

 次の行き先が決まった。
 彼お勧めの【桜屋】で、シズカの為の八咫烏の卵オパール入れを買おう。
 オパールはレイのペットだが、シズカは俺の従魔だからな。
 シズカの物は俺が買う。
 今度こそ、金を払う!
 あ、虫眼鏡も売っているか見てみよう。


しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

継母の心得 〜 番外編 〜

トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。 【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

転生して異世界の第7王子に生まれ変わったが、魔力が0で無能者と言われ、僻地に追放されたので自由に生きる。

黒ハット
ファンタジー
【完結】ヤクザだった大宅宗一35歳は死んで記憶を持ったまま異世界の第7王子に転生する。魔力が0で魔法を使えないので、無能者と言われて王族の籍を抜かれ僻地の領主に追放される。魔法を使える事が分かって2回目の人生は前世の知識と魔法を使って領地を発展させながら自由に生きるつもりだったが、波乱万丈の人生を送る事になる

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」 氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。 「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」 ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。 成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

処理中です...