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どこかに話すモフモフがいるらしいよ!探そう!!
第324話:八咫烏
しおりを挟む「お疲れ様?」
思わず疑問系になったのは、疲れたのは俺の精神だけな気がしたからだ。
<終わってはおらんがな>
言うが早いか、ガルムが斬撃を飛ばす。
上下に分かれた木が倒れ、そこから烏が飛び立つ。
それを追い掛けて跳んだシズカが一撃で蹴り落とした。
走ったスピードも、跳んだ高さも、蹴りの強さも、俺の目にはほとんど映っていない。
癒しペット枠じゃないのか!シズカ!!
蹴り落とされた八咫烏を、ユキが咥えて連れて来る。
手加減されていたのか、意識がちゃんとあるようだ。
<うぅ、痛たた……何をしやがる、月兎>
<そんな名前じゃないもんね!>
シズカがユキが咥えたままの八咫烏の頭をぺチリと叩く。
<ぐうぅ……離さんか!白狐!ガァ!!>
どうやらユキが噛む力を強めたようだ。
「はいはい、馬鹿は馬鹿のままだな。ユキ、放して良いよ」
俺の言葉に、ユキがポトリと八咫烏を落とす。
「アイツ等も大概だとは思うが、お前が居なかったら諦めてたかもな」
コイツが煽ったから事態が悪化したのは確かだ。
<ふん!復讐の為に利用できるものは利用するのは、当たり前じゃ!利用されるのは、頭が悪いからじゃ!>
ハイハイ、ソウデスネー。
「あ、そうだ。八咫烏の卵を拾ったのだが、何か知ってるか?」
『むつきしま』に本来居るはずのない八咫烏の卵。
コイツが無関係とは思えない。
<フン。俺達兄弟にいつも口煩く言ってた奴の卵を盗んでやっただけじゃ。もう死んでおっただろ?ざまぁみろじゃな!>
カカカッと笑う姿はとても醜くて、神聖なはずの八咫烏とは思えない。
もう、コイツは本当に駄目だな。
「ジルド、お願いしても良いか?」
それだけで通じたのか、ジルドが無言で頷く。
対人戦闘が終わったからか、ジルドとレイが側まで来ていた。
会話する為に俺達が八咫烏から視線を外した瞬間、八咫烏は逃げ出した。
隙を突いて実力で逃げ出したと思ってるのだろうな。
馬鹿にしたようにカァカァ鳴いている。
そんなわけないのにな。
ふらふらと飛ぶ八咫烏を、ジルドの蝙蝠が急襲する。
俺の想像よりも、遥かに射程距離が長いようだ。
蝙蝠達は一塊に集まって、少しギュッと収縮したように見える。
再び蝙蝠がバラけると、既に八咫烏の姿は無く、何かが地上に落ちるのが遠く見えた。
ドロップ品なのだろう。
拾わないけどな。
<スッキリしたのじゃ!>
ユキが本当にスッキリした表情で言う。
<八咫烏の卵、死んじゃってたの?>
シズカは卵が気になるようだ。
「いや、生きてるぞ」
ぱぁっとシズカの表情が明るくなる。
<あのね、八咫烏ね、バカラス兄弟以外は良い烏なんだよ!>
そうか。それは良かった。
「シズカが温めるか?」
小さいし、シズカでも大丈夫だと思う。
<妾も協力するぞえ>
ユキがシズカへするりと頬擦りする。
魔力量が多いユキも協力するなら安心だ。
<うん!シズカやってみる!>
良し。シズカが持ち歩けるように工夫しよう。
だがその前に名前を決めないとな。
プリンの時みたいに、こんなはずでは!!という後悔はしたくない。
あ、そうか。
これで卵が2つになったのか。
どっちが先に孵化するのか、楽しみだな。
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