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冒険に行……かないので、せめて色々見てみようと思う
第274話:とんぶりは好きだ
しおりを挟む「大丈夫ですか?」
レイが心配そうに俺の顔を覗き込む。
俺はガルムに埋もれて、グッタリとしていた。
ガルムは逃げたスライムを追わずに、俺を包むように丸くなって横たわっている。
顔は俺を心配そうに見ている。
「すまん、もう大丈夫だ」
小屋一面スライムだらけとか、予想外過ぎた。
想像より小さかったスライムは、半透明な上に白い核があり、密集するとまさしく魚卵だった。
単品なら、せめて3個とか5個とかなら、大丈夫だったのに……。
あ、卵じゃないから匹か。
もうどうでも良いか。
「あ、ガルム。スライム食べに行って良いぞ」
そうだよ。オヤツを食べに森へ来たのだ。
ガルムから起きようと体に力を入れると、額を顔で押された。
フワフワのガルムの毛が気持ち良い。
<スライムなど、またいつでも食える>
今度は頭頂に頬擦りされた。
<はい。ガルムの分のオヤツを持って来てあげたよ>
リルがポトリと一匹のスライムを落とす。
咥えて来たのか?
<きゅ!>
ヨミが中型犬サイズで、手にスライムを持ってやって来た。
同じ方法で、シズカも持って来る。
ユキも、口にスライムを咥えて走って来た。
ガルムが心配そうに俺を見る。
大丈夫。床一面とか、壁一面にみっしりしていなければ。
「楽しみにしていただろ?」
食べるように促してから、ゆっくりとガルムから体を起こす。
すかさずオーベに抱え上げられ、いつの間にか獣化していたレイとユズコの間に降ろされた。
プチリと粒が潰れる音がした。
あれだ。畑のキャビア『とんぶり』を噛み潰した時の音。
あの食感は、鯑やトビッコとも違う。
すりおろした長芋ととんぶりに、醤油とわさびで味付けして炊きたてご飯にかけて食べると美味いよなぁ。
プチリプチリと音が聞こえ、最後の一匹になった時、左袖からムンドが飛び出した。
<おれも食う!>
ガルムの前に置かれたスライムを、横から掻っ攫ってパクリと食べてしまったムンド。
サイズは3メートルほどになっていた。
<馬鹿者が!>
あ、兄から教育的指導入りました。
頭を上から押さえつけられております。『ぷぎゅる』って擬音が聞こえそうだ。
思わず笑ってしまった。
あの結界小屋は、スライムを閉じ込める為だけに建てられたようだった。
スライムはテイムできるほど知能が無いので、捕獲して閉じ込めたと推察された。
倒してしまうと、一定数保持する為にまた発生するので隠したのだろう、とは、オーベの予想。
職人街や工業街、商業街もある『しきしま』ではスライム粉の需要は高い。
値段の釣り上げや、納品依頼金やギルド貢献度の釣り上げを狙った悪質な冒険者の仕業だろう、とは、レイの推察。
勿論、冒険者ギルドへ報告した。
結界小屋から森の出口まで、今度は普通にスライムと遭遇した。
ムンドは食べていたが、他の皆は倒していた。
ドロップしたスライム粉は、ポーンラビットの丸焼き屋のオヤジに渡そうと思う。
そういえば、やはりスライムが大き過ぎてテラには食べられなかったらしい。
頑張って齧っても、食べる前にドロップアイテムへと変化してしまうそうだ。
念話で<粉がいっぱい~>と連絡が来たので、ユズコが迎えに行ってくれた。
街に戻ったら、何かグミみたいなオヤツを買ってやろう。
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