上 下
270 / 506
冒険に行……かないので、せめて色々見てみようと思う

第270話:教育的指導

しおりを挟む
 


「なぜ増えている?」
 ピリリを置いてくる~と冒険者ギルドからクランハウスへと転移したオーベと別れて、待ち合わせの噴水広場へと向かった。
 あちらは室内の移動だけなので、こちらより先に着いているだろうとは予想していた。
 しかし、人数が増えているのは予想外だった。

「なぜこんな面白そうな事に呼ばない!?」
 ユズコがもう見るからにワクワクしている。
「大怪我をした人がいるのに、不謹慎な言い方をしないでください」
 ユズコの頭を遠慮なく叩いたのは、無表情のレイだ。
 あれ?ちょっと怒ってる?
「置いていかれたからって、八つ当たりするなよ!」
 わはははっと笑ってレイの背中を叩き返すユズコ。
 もしかして、拗ねてるのか?レイは。

 そうか。それ程ポーンラビットの丸焼きが食べたかったのか。
 綺麗に食べきってしまったからな。
 少しは土産に残せば良かったな、スマン。
 スライムの件が片付いたら、また買いに行こう。
 いや、前回は無料タダで貰ったのだった。
 次回こそ、金を払って買う!



 街を出て、また森の方へと歩き出す。
 少し開けた場所に出たら、いきなりムンドが巨大化した。
 そう、巨大化と言う言葉がピッタリの大きさだ。
 なぜなら、ガルムと本来のサイズのリルが乗っても余裕があるからだ。
 それよりも、なぜ巨大化したムンドに一切の躊躇なく乗る?オーベよ。

あるじ!何してんの!早く乗れよ!>
 ムンドには、一度口の利き方を教えた方が良いのかな?ん?
<ムンド?誰に口を利いているのかな?>
<んぎゃ!痛い痛い痛い!爪!刺さってる!爪!!>
 リルからの指導が入ったようです。

 レイが俺を抱えてムンドの上へと飛び乗った。
 因みにヨミは俺の胸元である。
 ユズコは、ユキとシズカを抱き抱えて飛び乗って来た。二匹を下ろすと、サムズアップして見せる。
 それに頭を下げている二匹。可愛い。
 テラは自力でパタパタと飛んで来て、なぜかユズコの頭の上に落ち着いた。
 えぇ~そこ?

「獣化」
 テラを頭に載せたまま、獣化して白虎に変化したユズコ。
 獣化したユズコの頭の上で嬉しそうに揺れているテラ。
 もしや、この状態に慣れているのか?

「僕も獣化しましょうか?」
 ユズコとテラを凝視していたら、レイに問われた。
 いや、別に大丈夫です。
 そもそもお前、獣化したら戦えないだろうが。
 首を横に振ったら、なぜか残念そうな顔をされた。

<主よ、準備は出来ておるか?ムンドが飛ぶぞ>
 ガルムに声を掛けられるのとほぼ同時に、凄い重圧を体に感じる。
「うぉ!」
 思わず四つん這いになってしまう。
<ぎゅ!>
 胸元から転がり落ちたヨミが不満の声を出した。
 いや、ゴメン。いきなりで耐えられなかった……と思ったら、ヨミの怒りの相手はムンドだったようだ。

 中型犬サイズになったヨミが、凄い勢いで足ダンを繰り出している。
<痛っ!痛い!ヨミ!痛いって!マジで!>
 確かに痛そうな音がしている。
 止めた方が良いかな。
<返事が来る前に飛び立ってしまったおぬしが悪いの。反省せい>
 ガルムがヨミに加勢する。
<良かったねぇ。ヨミからので済んだようで>
 リルが牙を剥き出しにして笑う。怖っ。

 ヨミが怒らなかったら、リルが噛むつもりだったのかな?
 ヨミの気がすむまでやらしておこう。
 その方が良さそうだ。



―――――――――――――――
レイが拗ねている原因に気付いていないのは、本人ヴィンだけですw
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大好きな母と縁を切りました。

むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。 領地争いで父が戦死。 それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。 けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。 毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。 けれどこの婚約はとても酷いものだった。 そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。 そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……

伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃんでした。 実際に逢ってみたら、え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこいい伴侶がいますので! おじいちゃんと孫じゃないよ!

私、実は若返り王妃ですの。シミュレーション能力で第二の人生を切り開いておりますので、邪魔はしないでくださいませ

もぐすけ
ファンタジー
 シーファは王妃だが、王が新しい妃に夢中になり始めてからは、王宮内でぞんざいに扱われるようになり、遂には廃屋で暮らすよう言い渡される。  あまりの扱いにシーファは侍女のテレサと王宮を抜け出すことを決意するが、王の寵愛をかさに横暴を極めるユリカ姫は、シーファを見張っており、逃亡の準備をしていたテレサを手討ちにしてしまう。  テレサを娘のように思っていたシーファは絶望するが、テレサは天に召される前に、シーファに二つのギフトを手渡した。

もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

をち。
BL
公爵家の3男として生まれた俺は、家族からうとまれていた。 母が俺を産んだせいで命を落としたからだそうだ。 俺は生まれつき魔力が多い。 魔力が多い子供を産むのは命がけだという。 父も兄弟も、お腹の子を諦めるよう母を説得したらしい。 それでも母は俺を庇った。 そして…母の命と引き換えに俺が生まれた、というわけである。 こうして生を受けた俺を待っていたのは、家族からの精神的な虐待だった。 父親からは居ないものとして扱われ、兄たちには敵意を向けられ…。 最低限の食事や世話のみで、物置のような部屋に放置されていたのである。 後に、ある人物の悪意の介在せいだったと分かったのだが。その時の俺には分からなかった。 1人ぼっちの部屋には、時折兄弟が来た。 「お母様を返してよ」 言葉の中身はよくわからなかったが、自分に向けられる敵意と憎しみは感じた。 ただ悲しかった。辛かった。 だれでもいいから、 暖かな目で、優しい声で俺に話しかけて欲しい。 ただそれだけを願って毎日を過ごした。 物ごごろがつき1人で歩けるようになると、俺はひとりで部屋から出て 屋敷の中をうろついた。 だれか俺に優しくしてくれる人がいるかもしれないと思ったのだ。 召使やらに話しかけてみたが、みな俺をいないものとして扱った。 それでも、みんなの会話を聞いたりやりとりを見たりして、俺は言葉を覚えた。 そして遂に自分のおかれた厳しい状況を…理解してしまったのである。 母の元侍女だという女の人が、教えてくれたのだ。 俺は「いらない子」なのだと。 (ぼくはかあさまをころしてうまれたんだ。 だから、みんなぼくのことがきらいなんだ。 だから、みんなぼくのことをにくんでいるんだ。 ぼくは「いらないこ」だった。 ぼくがあいされることはないんだ。) わずかに縋っていた希望が打ち砕かれ、絶望しサフィ心は砕けはじめた。 そしてそんなサフィを救うため、前世の俺「須藤卓也」の記憶が蘇ったのである。 「いやいや、俺が悪いんじゃなくね?」 公爵や兄たちが後悔した時にはもう遅い。 俺は今の家族を捨て、新たな家族と仲間を選んだのだ。 ★注意★ ご都合主義です。基本的にチート溺愛です。ざまぁは軽め。みんな主人公は激甘です。みんな幸せになります。 ひたすら主人公かわいいです。 苦手な方はそっ閉じを! 憎まれ3男の無双! 初投稿です。細かな矛盾などはお許しを… 感想など、コメント頂ければ作者モチベが上がりますw

娘の命を救うために生贄として殺されました・・・でも、娘が蔑ろにされたら地獄からでも参上します

古里@電子書籍化『王子に婚約破棄された』
ファンタジー
第11回ネット小説大賞一次選考通過作品。 「愛するアデラの代わりに生贄になってくれ」愛した婚約者の皇太子の口からは思いもしなかった言葉が飛び出してクローディアは絶望の淵に叩き落された。 元々18年前クローディアの義母コニーが祖国ダレル王国に侵攻してきた蛮族を倒すために魔導爆弾の生贄になるのを、クローディアの実の母シャラがその対価に病気のクローディアに高価な薬を与えて命に代えても大切に育てるとの申し出を、信用して自ら生贄となって蛮族を消滅させていたのだ。しかし、その伯爵夫妻には実の娘アデラも生まれてクローディアは肩身の狭い思いで生活していた。唯一の救いは婚約者となった皇太子がクローディアに優しくしてくれたことだった。そんな時に隣国の大国マーマ王国が大軍をもって攻めてきて・・・・ しかし地獄に落とされていたシャラがそのような事を許す訳はなく、「おのれ、コニー!ヘボ国王!もう許さん!」怒り狂ったシャラは・・・ 怒涛の逆襲が始まります!史上最強の「ざまー」が展開。 そして、第二章 幸せに暮らしていたシャラとクローディアを新たな敵が襲います。「娘の幸せを邪魔するやつは許さん❢」 シャラの怒りが爆発して国が次々と制圧されます。 下記の話の1000年前のシャラザール帝国建国記 皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません! https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/129494952 小説家になろう カクヨムでも記載中です

偽物の侯爵子息は平民落ちのうえに国外追放を言い渡されたので自由に生きる。え?帰ってきてくれ?それは無理というもの

つくも茄子
ファンタジー
サビオ・パッツィーニは、魔術師の家系である名門侯爵家の次男に生まれながら魔力鑑定で『魔力無し』の判定を受けてしまう。魔力がない代わりにずば抜けて優れた頭脳を持つサビオに家族は温かく見守っていた。そんなある日、サビオが侯爵家の人間でない事が判明した。妖精の取り換えっ子だと神官は告げる。本物は家族によく似た天使のような美少年。こうしてサビオは「王家と侯爵家を謀った罪人」として国外追放されてしまった。 隣国でギルド登録したサビオは「黒曜」というギルド名で第二の人生を歩んでいく。

「unknown」と呼ばれ伝説になった俺は、新作に配信機能が追加されたので配信を開始してみました 〜VRMMO底辺配信者の成り上がり〜

トス
SF
 VRMMOグランデヘイミナムオンライン、通称『GHO』。  全世界で400万本以上売れた大人気オープンワールドゲーム。  とても難易度が高いが、その高い難易度がクセになると話題になった。  このゲームには「unknown」と呼ばれ、伝説になったプレイヤーがいる。  彼は名前を非公開にしてプレイしていたためそう呼ばれた。  ある日、新作『GHO2』が発売される。  新作となったGHOには新たな機能『配信機能』が追加された。  伝説のプレイヤーもまた配信機能を使用する一人だ。  前作と違うのは、名前を公開し『レットチャンネル』として活動するいわゆる底辺配信者だ。  もちろん、誰もこの人物が『unknown』だということは知らない。  だが、ゲームを攻略していく様は凄まじく、視聴者を楽しませる。  次第に視聴者は嫌でも気づいてしまう。  自分が観ているのは底辺配信者なんかじゃない。  伝説のプレイヤーなんだと――。 (なろう、カクヨム、アルファポリスで掲載しています)

神の眼を持つ少年です。

やまぐちこはる
ファンタジー
ゴーナ王国のフォンブランデイル公爵家のみに秘かに伝わる、異世界を覗くことができる特殊スキル【神の眼】が発現した嫡男ドレイファス。  しかしそれは使いたいときにいつでも使える力ではなく、自分が見たい物が見られるわけでもなく、見たからといって見た物がすぐ作れるわけでもない。  食いしん坊で心優しくかわいい少年ドレイファスの、知らない世界が見えるだけの力を、愛する家族と仲間、使用人たちが活かして新たな物を作り上げ、領地を発展させていく。 主人公のまわりの人々が活躍する、ゆるふわじれじれほのぼののお話です。 ゆるい設定でゆっくりと話が進むので、気の長い方向きです。 ※日曜の昼頃に更新することが多いです。 ※キャラクター整理を兼ね、AIイラストつくろっ!というアプリでキャラ画を作ってみました。意外とイメージに近くて驚きまして、インスタグラムID koha-ya252525でこっそり公開しています。(まだ五枚くらいですが) 作者の頭の中で動いている姿が見たい方はどうぞ。自分のイメージが崩れるのはイヤ!という方はスルーでお願いします。 ※グゥザヴィ兄弟の並び(五男〜七男)を修正しました。 ※R15は途中に少しその要素があるので念のため設定しています。 ※小説家になろう様でも投稿していますが、なかなか更新作業ができず・・・アルファポリス様が断然先行しています。

処理中です...