ほんわりゲームしてます I

仲村 嘉高

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冒険に行……かないので、せめて色々見てみようと思う

第268話:ここでもか!

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 ガリガリガリガリガリガリガリ

 俺の後ろから、背筋の凍る音がしています。

 かたいものがけずられるおとです。
 なつですからね。
 ていばんのホラー……って、真冬だわ!
 思いっきり冬休み満喫中だわ!!
『しきしま』の季節が常春だから忘れがちだけどな。

「骨を削る音って怖い」
 思わず両手で顔を覆って嘆いてしまった。
 音の原因は……誰だろう?
 誰だか判らないくらい、全員がむさぼり食っている。
 紳士で執事なガルムまでポーンラビット歩兵兎に夢中だ。

 多分1番ガリガリやってるのは、ヨミだ。
 共喰いにはならないらしいのは、キラーバニーの時に聞いていたけど、うちの癒し担当のヨミちゃんが!
 あ、いや、違うな。
 いや、癒し担当ではあるが、キラーバニーも骨ごと食うし、【従魔屋】ではアルミラージのオヤツとして、アルミラージの角が売られていたな。
 ガルムも『残忍なモンスター』って言ってたわ。


「おぉ!さすがに早いな!もう一匹いるか?」
 ポーンラビットの丸焼きを売っている屋台のオヤジが聞いてくる。
「いや、さすがに悪いからもういい……」
 返事が終わる前に、新しいポーンラビットが置かれた。
 質問した意味があるのか?オッサン!!

 ポーンラビット三匹分を丸焼き状態で買おうとしたら、「店の横の空いたスペースで食ってくならタダでやるぞ」と言われた。
 いやいや、普通に買いますよ!と断ったのに、ムンドが<マジか!食べる!>と横から返事をしてしまった。

 そうだった。ムンドの好物は兎だった。
 丸呑みして消化するのかと思ったら、咀嚼そしゃくしてた。普通の蛇とは違うのか。
 どちらかと言うと、蜥蜴トカゲの食事風景に近いな。
 サイズは5メートル。店のオヤジの希望である。


「これがヴィンクオリティか~」
 は?何それ。
 オーベの顔を見つめると、とても良い笑顔をされた。
「ピリリだけでも充分恩恵受けてるんだけどね~。俺としては~」
 店頭に近い位置は従魔達に任せて、俺とオーベは目立たないように通りに背中を向けて食べている。
 肉だけでは飽きるので、俺達は野菜も出して食べている。俺がビール、オーベがレモン炭酸水を飲みながら。
 勿論、許可は取った。

「生のピーマンに、味の濃い部分を詰めて食べると美味いな」
「ミニトマトを肉でくるんでも美味しいよ~」
「おぉ!このキュウリ美味いな!肉に負けてない」
 オヤジが一人、増えてた。

「店は良いのか?」
 オヤジの手には、持参した……泡盛?とにかく、強そうな酒。
「追加の肉を運んで来た息子が居るから大丈夫だ!」
 それは、大丈夫では無いのでは?
 店を見ると、若者が二人に増えてた。
 後から来たと思われる若者と目が合う。
 サムズアップされた。良いのか。


 本来、ここのスペースにも店があるらしい。
 同じポーンラビットの丸焼きを売っていて、味付けが違うのだとか。
 喧嘩しながらも競り合って売っており、その喧嘩風景も名物の一部だったと、オヤジが寂しそうに笑った。

 何日か前にスライム狩りに行って、大怪我をして帰って来たそうで、治るまでは休業を余儀なくされたとか。
 秘伝のタレにスライム粉が必要だったとかで、いつもは行かない森の奥まで狩りに行ってしまったそうだ。

 スライム、どこに行った?


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