268 / 506
冒険に行……かないので、せめて色々見てみようと思う
第268話:ここでもか!
しおりを挟むガリガリガリガリガリガリガリ
俺の後ろから、背筋の凍る音がしています。
かたいものがけずられるおとです。
なつですからね。
ていばんのホラー……って、真冬だわ!
思いっきり冬休み満喫中だわ!!
『しきしま』の季節が常春だから忘れがちだけどな。
「骨を削る音って怖い」
思わず両手で顔を覆って嘆いてしまった。
音の原因は……誰だろう?
誰だか判らないくらい、全員が貪り食っている。
紳士で執事なガルムまでポーンラビットに夢中だ。
多分1番ガリガリやってるのは、ヨミだ。
共喰いにはならないらしいのは、キラーバニーの時に聞いていたけど、うちの癒し担当のヨミちゃんが!
あ、いや、違うな。
いや、癒し担当ではあるが、キラーバニーも骨ごと食うし、【従魔屋】ではアルミラージのオヤツとして、アルミラージの角が売られていたな。
ガルムも『残忍なモンスター』って言ってたわ。
「おぉ!さすがに早いな!もう一匹いるか?」
ポーンラビットの丸焼きを売っている屋台のオヤジが聞いてくる。
「いや、さすがに悪いからもういい……」
返事が終わる前に、新しいポーンラビットが置かれた。
質問した意味があるのか?オッサン!!
ポーンラビット三匹分を丸焼き状態で買おうとしたら、「店の横の空いたスペースで食ってくならタダでやるぞ」と言われた。
いやいや、普通に買いますよ!と断ったのに、ムンドが<マジか!食べる!>と横から返事をしてしまった。
そうだった。ムンドの好物は兎だった。
丸呑みして消化するのかと思ったら、咀嚼してた。普通の蛇とは違うのか。
どちらかと言うと、蜥蜴の食事風景に近いな。
サイズは5メートル。店のオヤジの希望である。
「これがヴィンクオリティか~」
は?何それ。
オーベの顔を見つめると、とても良い笑顔をされた。
「ピリリだけでも充分恩恵受けてるんだけどね~。俺としては~」
店頭に近い位置は従魔達に任せて、俺とオーベは目立たないように通りに背中を向けて食べている。
肉だけでは飽きるので、俺達は野菜も出して食べている。俺がビール、オーベがレモン炭酸水を飲みながら。
勿論、許可は取った。
「生のピーマンに、味の濃い部分を詰めて食べると美味いな」
「ミニトマトを肉で包んでも美味しいよ~」
「おぉ!このキュウリ美味いな!肉に負けてない」
オヤジが一人、増えてた。
「店は良いのか?」
オヤジの手には、持参した……泡盛?とにかく、強そうな酒。
「追加の肉を運んで来た息子が居るから大丈夫だ!」
それは、大丈夫では無いのでは?
店を見ると、若者が二人に増えてた。
後から来たと思われる若者と目が合う。
サムズアップされた。良いのか。
本来、ここのスペースにも店があるらしい。
同じポーンラビットの丸焼きを売っていて、味付けが違うのだとか。
喧嘩しながらも競り合って売っており、その喧嘩風景も名物の一部だったと、オヤジが寂しそうに笑った。
何日か前にスライム狩りに行って、大怪我をして帰って来たそうで、治るまでは休業を余儀なくされたとか。
秘伝のタレにスライム粉が必要だったとかで、いつもは行かない森の奥まで狩りに行ってしまったそうだ。
スライム、どこに行った?
189
お気に入りに追加
1,461
あなたにおすすめの小説

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。
下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。
ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。
小説家になろう様でも投稿しています。

辺境伯令嬢は婚約破棄されたようです
くまのこ
ファンタジー
身に覚えのない罪を着せられ、王子から婚約破棄された辺境伯令嬢は……
※息抜きに書いてみたものです※
※この作品は「ノベルアッププラス」様、「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています※

辺境地で冷笑され蔑まれ続けた少女は、実は土地の守護者たる聖女でした。~彼女に冷遇を向けた街人たちは、彼女が追放された後破滅を辿る~
銀灰
ファンタジー
陸の孤島、辺境の地にて、人々から魔女と噂される、薄汚れた少女があった。
少女レイラに対する冷遇の様は酷く、街中などを歩けば陰口ばかりではなく、石を投げられることさえあった。理由無き冷遇である。
ボロ小屋に住み、いつも変らぬ質素な生活を営み続けるレイラだったが、ある日彼女は、住処であるそのボロ小屋までも、開発という名目の理不尽で奪われることになる。
陸の孤島――レイラがどこにも行けぬことを知っていた街人たちは彼女にただ冷笑を向けたが、レイラはその後、誰にも知られずその地を去ることになる。
その結果――?

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる