ほんわりゲームしてます I

冒険に行……かないので、せめて色々見てみようと思う

第252話：山椒はピリリと（笑）

　


「残念でしたね」
　本当に残念そうな顔をしているのは、『従魔転送魔導具』がペット枠の転送には適応していないと知ったレイだ。
「テイマーに転職しようかな～」
　何を言っているのか、この回復術師は。
「まず、卵を孵化させてから考えろ、オーベ」
　珍しくジルドがオーベにツッコミを！

「サラマンダーの卵の孵化条件は？」
　前に爺さんに聞いた気もするが、記憶に無いのだ。すまん。
「日向ひなたに置いて、１日１回の転卵だよ～」
　オーベがサラマンダーの卵に頬擦りしながら答える。
　炎が渦巻くような柄の卵は、熱そうに見えるが冷たいらしい。

「名前は決めてあるのか？」
　ドラゴネットの卵の孵化条件に『名付け』があったから、サラマンダーも先に名付けたら確率が上がるかもしれないからな。
「名前か～。ヴィンが付けるとしたら～？」
「サラ」
「だよね～」
　笑われた。

「イフリートとかはどうだ？」
　真面目に考える気無いな、ジルド。
　既に別物になってるよ、ソレ。
「flamme（フラム）とか」
　レイが言う。フランス語で炎という意味だそうだ。
「あ～違う国の言語にするのは有りかな～」
　何かひとりで納得しているな、オーベ。
「火蜥蜴ひとかげだから、Eidechse（アイデクセ）とか～」
　アイデクセ？と首を傾げたら、レイが「フランス語で蜥蜴です」と教えてくれた。

「そもそもサラマンダーって英語で山椒魚サンショウウオって意味だぞ」
　そうなの！？さすが雑学王ジルド。よく知ってるな。
「山椒か～『山椒は小粒でもぴりりと辛い』だっけ～？」
　あ、嫌な予感。
「ピリリにしよっか～」
　可愛いけどな。うん。


「キミの名前はピリリに決定～！」
　嬉しそうで何よりです……何て、卵を頭上に掲げるオーベを生温かい目で見ていたら、急にストンと座り込んだ。
　あ、既視感デジャヴ。
「魔力吸われた～！！」
　やっぱりか。
　そういう星回りなのかな？オーベは。

＜よし、我に任せるが良い！＞
　小狼姿のリルが座り込んでいるオーベに近付く。
「魔力くれるのかな～？」
　ちょっと顔色の悪いオーベがリルに話し掛ける。
　テラの時は、ここまでじゃなかったよな？
　いや、あの時はオーベが大量に吸われる前にガルムが魔力をあげてたのか。

＜魔力はもう足りているからね。我は孵化に必要な熱・をあげよう＞
　え？オーベの魔力だけで足りたのか！
　いかにテラが規格外だったのか判るな。
　ん？熱？
＜我の頭の上に卵を置くが良い＞
　日向で転卵どこいった？
　俺の頭の中が『？？？？？クエスチョンマークだらけ』になっている間に、オーベがリルの頭の上に火蜥蜴の卵ピリリを置く。
＜ふん！＞
　大きさは小狼のまま、目と口から青白い炎が吹き出した。


　鉄を消滅させるリルの炎が火蜥蜴の卵ピリリを焼いてますけど！？
　焦げ、焦げる！てか、消滅し……ない。
　赤い炎の柄だった卵が、リルの炎の色に変わっていく。
＜充分温まったようだね＞
　リルが頭の上から卵を下おろすと言うか、落とした。
　地面がジュッと音がして熔けたのは、気付かないフリをする。

＜うあっちい！！！！！＞
　卵がバカンと割れて、青白い炎に包まれた火蜥蜴が飛び出した。
　ヒビが入って、鼻先が出て、時間をかけて孵化する、という感動のシーンは割愛された。