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冒険に行……かないので、せめて色々見てみようと思う
第249話:トラブルは忘れた頃に……
しおりを挟む街に入るのって、これほど大変だったか?
ムンドが全長10メートル位のサイズになって門番の腰を抜けさせてから、門の横の建物に連れて行かれた。
それなりの広さの部屋に案内された時、リルが本性丸出しの恐ろしい姿になって見張りらしき兵士を脅した以外は、俺達は悪くないと思う。
因みに、ムンドは大きいと邪魔なので50センチ位になって、リルに乗っている。
寝ている間に略称がムンドに決まった事を伝えると、途端に上機嫌になって<おれの名前はムンド!>と言っていた。
いや、お前の名前はヨルムンガンドのままだけどな。
お馬鹿さんで可愛いな。
コンコンコンとノックされ、中にいた見張り役だと思われる兵士が扉を開ける。
いかにも偉そうなオジサンが入って来……倒れた!?
いや、これは、突き飛ばされたのか!
「大丈夫ですか?ヴィン」
暗黒騎士の正装と言うか、戦闘鎧姿のレイが立っております。なぜかわざわざ兜を小脇に抱えている。
その横には同じく、今までで1番吸血鬼らしい装備をしているジルド。前に見た時よりも、装飾品が増えている。
おやぁ?白いローブに金と緑の刺繍が入ってる凄い高そうな服に、見た事のない杖を持ったオーベまでいる。
「いや、俺は大丈夫だが……むしろお前達が大丈夫か?」
頭が。
なぜこれ以上無いくらいの重装備?
誰と戦うのかな?いや、闘うのかな?
「いやぁ~、クラン員が大暴れしてるから責任者出て来いって呼ばれたからさ~」
笑顔のオーベが怖いです。
「いや、分不相応な魔物を連れた冒険者がいるから、確認をお願いしただけで」
倒れたオジサンが起き上がりもせずに、むしろ正座してオーベに言い訳をしている。
「ガルムもリルも登録してあるだろう。白狐と月兎が増えただけで、何が不満だ」
さすがジルド、目敏いな。
白狐と月兎にもう気付いたか。
しかし、もう一匹増えたのには気付かなかったようだ。
<おれもいるぞ!>
リルの頭の上から顔を出し、首の後ろの羽根らしき物をピコピコ動かして挨拶をするムンドだ。
その羽根、動いたのか。
「ヨルムンガンド、略してムンドだ。リルの弟だな」
リルの上から降りて来たムンドを三人に紹介する。
「あと、白狐のユキと月兎のシズカ。正式に従魔になった」
俺の横に、ユキとシズカが並ぶ。
<久しぶりなのじゃ>
<ただいま!>
挨拶をしたユキとシズカに、ジルドの目が嬉しそうに歪む。
その表情は、ファンが泣くからやめた方が良いぞ。
「暴れたというのは、ムンドですか?」
妙に冷静なレイが聞いてくる。
いつもはまとめ役のオーベが、ムンドを見て興奮しているからだろう。顔!顔!!
<暴れたんちゃうわ!小さくなってたら、世界蛇はもっとデカイて言うから、望み通り大きくなってやったんじゃんか>
本当ですか?みたいに俺の顔を見てくるレイに、頷いて見せる。
「最初は街に入るのに相応しい状態だった従魔に証明を強要しておいて、状況が不利になったから相手のせいにしたと。従魔の暴走でもなければ、分不相応な冒険者でもないようですが?」
レイがオジサンを見下ろす。
確かに、喧嘩を売って来た門番が腰を抜かしたら、ムンドはすぐに今のサイズになったし、リルが今の姿になったのは、この建物に連れて来られてからだ。
証明の強要までいくかと言ったら微妙だが。
「ねぇ、世界蛇の本当のサイズ知ってる?今ここで証明させてみようか?街どころか、この国が無くなっちゃうけどね」
オーベがにこやかに笑った。
怖っ。
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