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冒険に行……かないので、せめて色々見てみようと思う
第239話:ごめんなさい?
しおりを挟む神殿を奥に向かって進んで行く。
厳粛な雰囲気……ではなく、ガッシャガッシャと重装備な鎧の音が響いていた。
「んもう、せっかくの雰囲気が台無し!」
音源である重装騎士の頭を、ココアが思いっきり叩く。
ガゴン!と殴った音と共に、ガシャンと鎧が揺れる音がする。
「痛え!」
叩かれた重装騎士が叫ぶ。
この人もセーフ機能オフらしい。
「盾役がこのくらいで騒がないでよね」
フンッとココアは顔を背けるが、無茶苦茶痛そうだぞ。
「そうよね~。強い敵を求めてここに来たのに、弱音吐くなって感じよね~」
ロリッ子魔女が持っていた杖で重装騎士の頭をコンコンと叩く。
シスター姿の人は、うっすらと笑みを浮かべたまま、何もせずに見守っている。
どうやら重装騎士の彼は、このパーティーではいじられ役のようだ。
もう一人の、全身黒ずくめの人は、覆面をしているからか終始無言だ。ていうか、忍者?忍者なの!?
<強い敵など、この神殿には居らんぞ>
ガルムがココアに告げる。
多分ガルム的には、知り合いのココアへの親切だったのだろう。
<そうだね。居たのは我の弟だけだ>
リルもガルムに同意する。
「ヨルムンガンドって、充分に強いと思うけど……」
ロリッ子魔女がコソッと呟く。
どこから見られていたのか気になるな。
「森を溶かしたのはヨルムンガンドなのかしら?」
ココアが聞いてくる。
違うとなれば、他に強い敵がいる事になるから、そちらを探すつもりなのだろう……が。
「すまん。それをやったのは、うちのガルムだ」
期待を裏切って、本当に申し訳ない。
神殿の1番奥は大広間になっており、大きな噴水が設置されていた。
水は湛えているが、噴水自体は機能していない。
それでもとても澄んだ水なので、浄化機能でもあるのだろうか?
この場合は、浄化魔法になるのかもしれないが。
<ここの水はな!体が綺麗になるんだぞ!>
清水はどれでも体が綺麗になると思うのだが。
<馬鹿な弟ですまない。体の傷とかが治ると言いたいようだよ>
リルがヨミの通訳をよくしてくれるのは、この弟の通訳をしていたからかもしれない。
頑張れ兄ちゃん。
「飲むのか、かけるのか、どっちなのかしら?」
シスターが質問してくる。
初めて声を聞いたな。
<知らない!おれ、中で泳いでたし>
マジでちょっとお馬鹿さんなのかな?会話が成立しない。
<泳ぎながら水を飲んでしまっていたので、どちらだか判らないって意味だと思うよ>
リルが通訳する。
マジで頑張れ、兄ちゃん。
ロリッ子魔女が鑑定したら、どっちでも良いようだ。
ただし、回復ポーション程の効果は無いらしいので、かける方がおすすめらしい。
凄いな、魔女の鑑定。俺の鑑定結果は『ちょっと回復する水』としか判らない。
「回復手段があるなら、お願いしたい事があるの!」
ココアがキラキラした目でこちらを見てくる。
嫌な予感しかしない。
「従魔と対人戦闘させてちょうだい!」
強い敵と戦いたくて、態々最前線から『しきしま』まで来てるのに、蓋を開けたらうちの子だったわけだしなぁ……。
「死なない程度になら」
あと、言わないが俺のトラウマにならない程度でお願いします。
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