上 下
203 / 506
いろんな意味での初イベントに参加しますよ!

203:好きこそ物の……?

しおりを挟む
 


 ジルドの手の上に落ちたカラフル兎(黄)を鑑定すると、所有権はジルドだけだった。
 兎の湧いたマグカップを持っているだけでは、捕獲とはみなされないようだな。
「次に生まれたら、俺にくれ!」
 ユズコが手を上げる。
「良いよ~」
「その代わり、また赤いのが生まれたらオーベにやろう!」
 サムズアップにキラーンと歯が光りそうな爽やか笑顔のユズコ。

「ああ、なるほど。では、私も(緑)が生まれたら、オーベに譲ろう」
 ジルドもオーベに提案する。
 しかし当のオーベは平坦な顔をしている。
 所謂いわゆる『スン』とした顔だ。
蜥蜴トカゲとか蛇なら大喜びなんだけどね~」
 忘れてたけど、オーベは爬虫類好きだったな。
 だからテラを1番構うのか。


 さてと。複数所有権のある兎は、基本色の子達は持っている数が1番少ない順にポチッていく。
 鑑定で出たウィンドウで自分の名前をポチると、所有権が確定する仕組みだ。
 要は、権利放棄しますのでどうぞ的なポチリなのだろう。
 通常の鑑定画面には触れられないので、イベント仕様のようだな。

 紫と橙は、幸い各三匹いたので所有権のある三人で仲良く分け合った。
 紫がレイとユズコと俺、橙がオーベとユズコと俺である。
 橙の一匹の所有権は、俺とオーベだけだったので、うちの(赤)とオーベの(黄)の子なのだろう。

「僕もヴィンとの子が欲しいので、この子だけは置いていきます」
 言い方!!
 レイが馬鹿な事を言って、(青)を一匹置いていった。
「じゃあ私も!」
 咲樹が(青)と(黄)を置いていく。
「じゃあ俺も!」
 ユズコまで(赤)を一匹俺の小屋へ戻す。
 お前達のカラフル兎だけで、紫も橙もできるけど!?

「緑は他と混じらないのか?」
 ジルドがポツリと呟く。
「いや、絶対に何かあると思いますよ。無駄な色をここの運営が用意するとは思えませんから」
「俺もそう思う~。そしてユズコ、手を出して~」
 オーベのマグカップの中に、また(黄)が湧いたようだ。
「ヴィンの部屋だと、従魔達が居るからか湧くのが早いね~」
 ユズコの手の中へ、コロンコロンと(黄)二匹が転がり出た。


「ヴィン、飼育係ですね」
 兎小屋を見ていた斗苫斗的が、笑いながらそんな事を言う。
「ここまで整った環境は、他の人には無理だもんね」
「特にこの特殊な水じゃな!」
 綺羅と爺さんも、斗苫斗的に同意を示すような事を言う。

「そもそも、こんなに大量のカラフル兎が居るだけで異常ですけどね」
「基本の5色以外に金とか銀とかいるなんて、誰も知らないと思う」
「所有権って何ぞや?と思っとったが、増殖するんじゃったのか」
「運営も焦っただろうね。1ヶ所にこんなにカラフル兎が飼育されるなんて、想定外だと思う」
「告知メッセージから焦りが感じられましたもんね」

 うるさいぞ、そこの三人。
「飼育係……」
 レイも、そこに反応するな。
「兎の持ち主と、世話した人に所有権の権利が発生するのか」
 あれ?ジルドまで何か言い出した。
「多分、パーティーやクラン単位でひとところに集めて飼育する予想だったんだろうね~」
「捕獲できなくても、一生懸命に世話すれば貰える的な感じかしら?」
「ジャイアニズム防止の『所有権は自分以外を選択』だな!」
 奥が深いな、イベントって。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生王女は現代知識で無双する

紫苑
ファンタジー
普通に働き、生活していた28歳。 突然異世界に転生してしまった。 定番になった異世界転生のお話。 仲良し家族に愛されながら転生を隠しもせず前世で培ったアニメチート魔法や知識で色んな事に首を突っ込んでいく王女レイチェル。 見た目は子供、頭脳は大人。 現代日本ってあらゆる事が自由で、教育水準は高いし平和だったんだと実感しながら頑張って生きていくそんなお話です。 魔法、亜人、奴隷、農業、畜産業など色んな話が出てきます。 伏線回収は後の方になるので最初はわからない事が多いと思いますが、ぜひ最後まで読んでくださると嬉しいです。 読んでくれる皆さまに心から感謝です。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

運極ちゃんの珍道中!〜APの意味がわからなかったのでとりあえず運に極振りしました〜

斑鳩 鳰
ファンタジー
今話題のVRMMOゲーム"Another World Online"通称AWO。リアルをとことん追求した設計に、壮大なグラフィック。多種多様なスキルで戦闘方法は無限大。 ひょんなことからAWOの第二陣としてプレイすることになった女子高生天草大空は、チュートリアルの段階で、AP振り分けの意味が分からず困ってしまう。 「この中じゃあ、運が一番大切だよね。」 とりあえず運に極振りした大空は、既に有名人になってしまった双子の弟や幼馴染の誘いを断り、ソロプレーヤーとしてほのぼのAWOの世界を回ることにした。 それからレベルが上がってもAPを運に振り続ける大空のもとに個性の強い仲間ができて... どこか抜けている少女が道端で出会った仲間たちと旅をするほのぼの逆ハーコメディー 一次小説処女作です。ツッコミどころ満載のあまあま設定です。 作者はぐつぐつに煮たお豆腐よりもやわやわなメンタルなのでお手柔らかにお願いします。

【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

女子力の高い僕は異世界でお菓子屋さんになりました

初昔 茶ノ介
ファンタジー
昔から低身長、童顔、お料理上手、家がお菓子屋さん、etc.と女子力満載の高校2年の冬樹 幸(ふゆき ゆき)は男子なのに周りからのヒロインのような扱いに日々悩んでいた。 ある日、学校の帰りに道に悩んでいるおばあさんを助けると、そのおばあさんはただのおばあさんではなく女神様だった。 冗談半分で言ったことを叶えると言い出し、目が覚めた先は見覚えのない森の中で…。 のんびり書いていきたいと思います。 よければ感想等お願いします。

チート級スキルを得たゲーマーのやりたいことだけするVRMMO!

しりうす。
ファンタジー
VRゲーム【Another world・Online】βテストをソロでクリアした主人公──────雲母八雲。 βテスト最後のボスを倒すと、謎のアイテム【スキルの素】を入手する。不思議に思いつつも、もうこのゲームの中に居る必要はないためアイテムの事を深く考えずにログアウトする。 そして、本サービス開始時刻と同時に【Another world・Online】にダイブし、そこで謎アイテム【スキルの素】が出てきてチート級スキルを10個作ることに。 そこで作ったチート級スキルを手に、【Another world・Online】の世界をやりたいことだけ謳歌する! ※ゆるーくやっていくので、戦闘シーンなどの描写には期待しないでください。 ※処女作ですので、誤字脱字、設定の矛盾などがあると思います。あったら是非教えてください! ※感想は出来るだけ返信します。わからない点、意味不明な点があったら教えてください。(アンチコメはスルーします)

アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波
ファンタジー
新入社員として社会の波にもまれていた「青葉 春」。 社会人としての苦労を味わいつつ、のんびりと過ごしたいと思い、VRMMOなるものに手を出し、ゆったりとした生活をゲームの中に「ハル」としてのプレイヤーになって求めてみることにした。 ‥‥‥でも、その想いとは裏腹に、日常生活では出てこないであろう才能が開花しまくり、何かと注目されるようになってきてしまう…‥‥のんびりはどこへいった!? ―― 作者が初めて挑むVRMMOもの。初めての分野ゆえに稚拙な部分もあるかもしれないし、投稿頻度は遅めだけど、読者の皆様はのんびりと待てるようにしたいと思います。 コメントや誤字報告に指摘、アドバイスなどもしっかりと受け付けますのでお楽しみください。 小説家になろう様でも掲載しています。 一話あたり1500~6000字を目途に頑張ります。

処理中です...