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のんびりと家庭菜園を楽しむはずだったのだが、アレ?おかしいな

135:ひとつめとふたつめ

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「うちは子供のお遊び用の玩具おもちゃは作ってないんだよ」

 はい、消えた。
 1番近かったので行ってみた『仕事が早い工房』だ。
 ハーフリングサイズの耕耘機を頼んでいるのに、なぜ子供の玩具と変換されるのか。一度頭の中を掃除した方が良いと思われる。
 絶対、蜘蛛の巣が張っている。
 思い込みが激しいという言葉では片付けられないぞ。

「ヴィン、帰りましょう」
 俺よりも先に、レイの堪忍袋の緒が切れたようだ。
 どっちにしろ、ここには頼む気はなかったけどな。負け惜しみじゃないぞ。

 一応の掃除はしてあるが、何となく隅の方が煤けている受付。
 チラッと見える作業場の机の上は、端に書類らしき物が乱雑に積まれている。
 多分だが、仕事は早いしある一定の基準はクリアできる製品は作るが、それだけだろう。
 可もなく不可もなく。
 現実リアルでの量産品レベルだな。
 赤くないモビルスーツ。いや、現実にモビルスーツは無いけどね!



「今からだと、3ヶ月待ちになっちまうな」
 ここは、仕事が丁寧だが時間がかかると言われた工房だ。
 この「3ヶ月」は耕耘機が出来上がる期間ではない。仕事に取り掛かれるのが3ヶ月先なのだ。

 工房内に並んでいる品を見てみると、芸術品と見間違うほどの機械達。
 何に使うか全然予想もつかないが、とても美しい。
 例えるならば、現実リアルでのパイプオルガンや手回しオルゴールのような、精巧で美しいけれど、あくまでも使う事が目的の物。

 とても場違い感の激しい俺の注文。
 何せ耕耘機。
 だが工房の職人は、俺の話を聞いても嫌な顔一つせず、真剣に話を聞いてくれた。
 仕事に貴賤など無い!と本気で言えるタイプの職人だ。
 嫌いでは無い。いや、むしろ大好きだ。

 だがこの工房に耕耘機を頼むのは、とても躊躇ためらわれる。
 しかも3ヶ月+作成期間は待てない。
「時間を取らせて申し訳なかった。今回は急ぎなので、次回、期間に余裕がある時に頼む事にする」
 俺の言葉に、職人は笑顔で「ぜひよろしくお願いします」と応えてくれた。

 隣のテーブルで、咲樹が何やら話を進めているのが見えた。
 既に簡単な設計図まで作成している。
「結界」「魔導具」「魔石」などの単語が聞こえる。
 おぉう、ファンタジー。

「咲樹。俺達は次の工房へ行くが、お前はどうする?」
 ここは受付が狭いので、ガルムとリルだけでなく、レイとミロも表で待っている。
 その状態で咲樹を待つ選択肢は、俺達には無い。
「残念だけど、今日はここまでかしら。明日、ログインし異界から来たら、連絡するわね」
「あぁ、わかった。レイとミロにも伝えておく」
 パタパタと色っぽく手を振る咲樹と、ここで別れる事にする。

 咲樹、手を振る度に揺れるふたつのメロンに、目の前の兄ちゃんが釘付けだぞ。
 異界人プレイヤーだけでなく、住人NPCまでとりこにするのか!?
 ん?住人だよな?
 まぁ、どちらでも良いがな。うん。


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