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逃げたい……けど、誰も同意してくれそうもないのはなぜだろう
133:優先順位?
しおりを挟む建物内に響き渡る「デカイ犬の飼い主」を探すオッサンの声に、工業ギルドの職員は勿論、その場にいた全員が入口へと視線を向ける。
俺とは別の受付にいたレイは即座に立ち上がり、咲樹とミロも即座に入口へと向かう。
ここですぐに行動に移せるのが、一流の冒険者なのだろう。
俺?俺はマヌケな顔でオッサンを眺めている。
「何か問題が?」
緊迫した雰囲気で咲樹が問い掛けると、オッサンは焦りながら苦笑する。
「おぉ、スマン、スマン。子供達が登りそうだから注意したんだがな。なんせ子供だから何するかわからん」
あぁ~何か判った気がする。
俺がガルムから降りた時、キラキラ見上げていたあの子供達か。
レイが危ないから触れないように注意していたが、俺が乗っていたからな。説得力が無かったのだろう。
俺の許可が無ければ登れないだろうが、纏わりつかれるだけでストレスが溜まりそうだ。
「すみません、ちょっと表に出て来ます」
受付嬢に声を掛けると、先程の工房の場所が載っている地図を渡してくれる。
「もう直接尋ねていただいて大丈夫です。この地図自体がギルドの紹介状代わりですので」
地図には工業ギルドの看板と同じマークが印刷されていた。そして、先程教えてくれた3つの工房の星に色が付いている。
「紹介料とかは?」
「工業ギルドでは、注文を受けた工房が払う事になってます。必ずその地図をご持参くださいね。特殊な魔法が掛かってますので」
なるほど。ズルはできないわけか。
「頼まないのはありなのか?」
必ず頼むとは限らないからな。技術もそうだが、ひととなりは大事だ。
最高の技術者であっても、あまりにも偏屈だったりしたら頼みたくない。
「強制ではありませんので、大丈夫です。その場合は、工房にも支払い義務は発生しませんので気にしないでください」
最後にお礼を言い、ギルドを出た。
思ったよりも時間を食ってしまった。いや、俺が色々聞いたのがいけないのだが……
仕方ないだろう、現実では事務方なんだ。
お金が絡む事はハッキリさせておきたい性なんだ。
「だから、こう見えてガルムは魔獣だからね!遊べないんだよ~!」
ミロがガルムと子供達の間に立って、両手を広げて通せんぼしていた。
ガルムは大人しくお座りしている。その横には、リルを抱えているレイ。
シュールだ。
「もう、リルにも大きくなってもらっちゃう?」
急に横から声を掛けられてちょっとビビった。出入口脇に居た咲樹だ。
「レイの絶対零度の視線にも怯まないなんて、さすが子供よね」
感心してるのか、呆れてるのか、頬に手を当てて首を傾げながら言う咲樹は、実は子供が苦手だ。厳密には、うるさい子供が嫌いだ。
「とりあえず、ここから離れるか」
ガルム達から子供を離すように、咲樹経由でミロに連絡を入れる。
「ガルム、リル、行こうか」
俺の声に反応して、ガルムが立ち上がった。
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