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逃げたい……けど、誰も同意してくれそうもないのはなぜだろう

132:工業ギルド

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「ふおあぁぁぁ」
 ん?前も同じような声をあげた記憶があるな。まぁ、良いか。
 俺は今、工業ギルドの前にいた。

 一言で言い表すなら『鉄』だな。
 鉄筋の建物とかでは無く、あくまでも
 極限まで磨かれた鉄の塊が、縦横たてよこ数十メートルある感じだ。
 昔懐かしルービックキューブを鉄で作り、巨大化したみたいな建物。
 鑑定してみると『鋼』と出た。
 鉄と鋼の違いがわからん。ジルドが居たら、嬉々として教えてくれそうだが、残念だが今日は居ないしな。

 なぜ工業ギルドへ来たのかというと、クランハウスの庭を本格的に開拓しようと思ったからだ。
 手押しのトラクターが欲しい。
 そもそもトラクターで合っているのかも微妙だが、要は固い土を掘り起こし柔らかくするアレだ。

 本格的に職業から農業従事者ファーマーを選んでいれば、クワスキでもスキルで楽々開拓できるのだろうが、俺は非力なテイマーだ。
 機械無しで畑を作る自信がない。
 しかも、体型が子供なせいで市販の機械が使えない。
 どうせ特注品を頼むなら、良い物にしよう!という事で、工業ギルドへと来たわけである。



「トラクター?を頼みたい」
 ちょっと疑問系なのは、機械の名前が合っているのか自信が無いからだ。
「トラクターですか?運転は出来ますか?用途は?」
 受付の女性が無表情で対応してくる。
 俺的には、子供扱いで頭ごなしに拒否してこないので、かなり好感度が高い。

「運転というか、手押しで使える物が欲しい。広めの家庭菜園を作りたい」
 一瞬首を傾げた受付嬢は、「あぁ」と小さい声を出した。
耕耘機こううんきですね。土をたがやすのが目的ですよね?」
 言葉と同時に、パンフレットを広げて見せてくる。
 まさしく、俺が求めている物がそこにあった。


「仕事が早いのは、この工房です。時間はかかりますが丁寧なのは、ここ。細かい作業が得意なのはここですね」
 街の地図を広げ、星印の付いた場所を次々と指差す。
「どこも登録基準は満たしてますので、粗悪な品を作る事はありません」
 ほうほう、なるほど。

「鍬や鋤も作ってもらえるか?」
「どうでしょうか。そういった物は本来工業ではなく、鍛冶職人の方が得意ですので……」
 ちゃんと分業されているのか。
 もしかして、農業の街とかも在るのかもな。
 特殊な苗木とか売ってるかもしれない。ヤバイ。ちょっとワクワクしてきたぞ。

「おぉい!入口横のデカイ犬の飼い主居るか?」
 建物に入って来た途端、オッサンが大声で叫ぶ。筋骨隆々でスキンヘッドの、いかにもなオッサンだ。
 他の受付で何やら注文していたレイが立ち上がり、壁際に置いてあるパンフレットを見ていた咲樹とミロが入口へと走った。
 俺は、は?とマヌケな声を出してオッサンを凝視していた。


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