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逃げたい……けど、誰も同意してくれそうもないのはなぜだろう
131:ヒエラルキー
しおりを挟むまだ居場所の決まらないリルは、ウロウロしている。
俺の足の間に収まってみたり、頭に乗ってみたり、服に入ろうとしてヨミに怒られたり、落ち着きがない。
チビッコ組に比べると、少し大きいのもネックだ。頭に乗せるには大き過ぎる。
「リル。中に入るのは諦めろ。座ってる時は膝の上、俺が歩く時はリルも自力で歩く、それで良いだろう?」
抱いて歩くには大きいし、ヨミが潰れる。
<しょうがないのだろうね>
しょんぼりとする小狼は、とて人々を恐怖に陥れた魔獣には見えない。
ガルムは威厳のある感じで、どちらかと言うと『お爺ちゃん』なのだが、リルは姿のせいかもしれないが、どこか子供っぽい。
卵から孵ったばかりのテラと、あまり変わらない気すらしてくる。
謙虚さがある分、テラの方が中身大人か!?
でも実際は、リルはヨミやテラと違って大人だからな。甘やかさないぞ。
「ま~だ落ち着かないの?オレちゃんで良かったら抱っこして歩くよ?」
ミロが声を掛けてくる。今日は予定がないから最後まで付き合うよ~と、一緒に街中散策中だ。
<主じゃなければ、意味はないからね。遠慮しておこう>
偉そうだな、リル。
<儂が咥えてやろうか?>
ガルムが意地悪い声を出す。それ、親が子供の首のところを咥えて歩く、アレの事だよな、絶対。
「それなら、獣化した僕が咥えて歩きましょうか?」
レイまで乗ってきちゃったよ。
「私の胸元に入る?」
咲樹も乗ってきて、服の首元を引っ張る。
多分、それは、何か違うゲームになりそうだから、やめなさい。
それに、入り辛そうだしな。絶対狭い。
腰が逆エビになるか、首がグエッてなる。
リルは咲樹の胸元をチラリと見た後、盛大にため息を吐く。
ボソリと<邪魔>と呟いてたのは、咲樹には内緒にしておこう。
最終的に、今はガルムの頭の上にいる。
手足を伸ばしてぺションと伏せている姿は、本当に単なる小狼だ。
<リル。もっと周りを警戒せぬか>
ガルムに窘められてるよ。
<街の中で何があると言うのかい?>
やる気のかけらも無い声で返事をしてるけど、そのうち怒られるぞ、リルさんや。
<ぎゅうぅ>
俺の胸元のヨミが不満気な声で鳴く。
<えぇ?そんなに怒らなくても良いではないか>
<ぎゅう!>
<いやいやいや。ヨミに本気で刺されたら、我でも痛いからな!>
不満どころではなく、かなりお怒りのようです。ヨミさん。
従魔達の立場というか、ヒエラルキーが気になる今日この頃。
後から従魔になると、魔獣としての格とか実力とか関係なく『後輩』なのか?
ガルムとヨミの関係は、ガルムが保護したせいもあり、お爺ちゃんと可愛い孫みたいな扱いだからな。テラもガルムの魔力のお陰で孵化したし、扱いは『孫』なのか?
ヨミとテラは、孵化前からヨミが威嚇したから、わかり易く上下関係ができている。
あれ?ヨミちゃん、最強?
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