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逃げたい……けど、誰も同意してくれそうもないのはなぜだろう
129:工業の街の冒険者ギルド
しおりを挟む「あの、何かご用でしょうか?」
ギルドの扉が開き、遠慮気味に女性が声を掛けてきた。
ロップ!ロップイヤーだ!垂れ耳うさぎだよ!兎獣人!
そりゃギルドの前でたむろって壁を殴ったりしていれば、職員が出て来るよな。コンビニ前のヤンキーかって話だ。
「すまん。従魔登録に来た」
リルを指差す。
「こちらへどうぞ」
兎獣人の職員は、俺達を中へと誘導した。
天井まで届くサイズの扉は、両開きの自動ドアだった。
通る人のサイズにより、片側だけ開いたり、両開きになったりするようだ。
その人のサイズ分だけ開くようになっており、兎獣人サイズしか開いてなかった扉が、咲樹とレイが一緒に通る時には更に開いた。
勿論、今はガルムとリルが通る為、両開きの全開状態だ。
宙に浮いてるテラだけでも開くのだろうか?後で実験してみよう。
あ、小さいヨミでも開くのかもやってみたいな。
「何だあれ?」「ガルムと……白い狼?」「あれ、【sechs(ゼクス)】だよな」「オーガスレイヤーのココアだ」
「【spinnengewebe(シュピネンゲヴェーベ)】のミロじゃないか?」「何で子供が一緒に?」
誰が子供だ!
思わず足を止めて睨み付ける。
俺の行動に敏感な従魔達も、一緒になって失礼な発言をした冒険者を睨み付けた。
街中ならともかく、冒険者ギルドの中に子供がいるわけないだろうが。
……と、俺の予想以上に周りの人間がビビるから何かと思ったら、リルが出会った当初のあの目と口から青白い炎を出す姿になっていた。
さすがにそれはやりすぎだな、リル。
魔物玉蜀黍のようだった冒険者達が、微動だにしなくなったぞ。
「リル、行くぞ」
俺が声を掛けると、リルは炎を引っ込め冒険者に向けてフンって表情をした。
頭の上にいたヨミは熱くなかったのか?と思ったが、澄ました顔をしているから大丈夫だろう。
しかし、ココアはオーガスレイヤーなのか。さすが攻略組。
ミロは何だっけシュナなんたら?
「【spinnengewebe(シュピネンゲヴェーベ)】ね。ドイツ語の蜘蛛の巣って意味なんだよ。うち、リーダーが厨二病を患っててね~」
俺の視線に気付いたミロが説明してくれた。ご愁傷様です。
従魔登録は、何の問題もなく終了した。
ヨミの変化した姿は別に報告しなくても問題はないそうだが、今後の資料として報告してくれれば嬉しいと言われた。
とりあえず、大型の角ドリドリと、更に雷を纏った姿を披露した。
「これからは、この姿の敵も出るって事よね」
兎獣人が呟く。実は彼女、ここのギルドマスターでした。人は見かけに依らない。
従魔登録が終わって返されたカードが、微妙に色が変わっていた。
俺の怪訝な表情に気付いたのだろう。兎獣人が説明をしてくれる。
「『commerce(コマース)』で出されていた〔大型魔獣退治依頼〕が達成扱いになりました。実際には退治してませんが、脅威が無くなったので意味は同じですからね」
なるほど。
「それから、新しい魔獣の報告と、変異種の報告もギルド貢献度が上がります。ありがとうございました」
ギルド貢献度って、こうやって上がるのか!
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