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逃げたい……けど、誰も同意してくれそうもないのはなぜだろう
128:この世界のスライム
しおりを挟む「ふおぉぉぉ!」
想像よりも遥かに立派な建物に、思わず感嘆の声が漏れた。
大きさもそうだが、建築物としての価値も高そうだ。
「この街は工業の街ですからね。実は素材採取依頼などは商業の街である『commerce(コマース)』より多いくらいです」
レイの説明にも「へぇ~」しか言えなかったが、驚き過ぎて言葉が出なかっただけだからな。聞き流してたわけじゃないから、悄気るなよ。
『commerce(コマース)』の冒険者ギルドは、所謂皆が想像する『立派な冒険者ギルド』という感じだ。
重厚な木の扉に土壁で、ヨーロッパ調の木造建築って感じの建物だ。
しかしここ『industry(インダストリィ)』の冒険者ギルドは、全面ガラス張りの今時なお洒落な建物になっている。
「コレ、ガラスに見えるけど実はスライムなんだよ~ん」
ミロがガラスに見えるソレをノックするように叩くが、音がしない。
よく見ると、拳の形に少しだけへこんでいた。
そのへこみも、見ている間に戻っていく。
「スライムの核とスライム粉で出来ているらしいけど、そこは企業秘密らしいわよ」
ココアが正拳突きを壁に叩き込むが、低反発マットのようにへこんだだけだった。
建物の中にいた人は、腰が引けてたけどな。後で謝りに行けよ。
建物に入らずに色々していたら、例の衛兵隊長?が声を掛けてくる。
「我々はこれで失礼します」
十人の衛兵が綺麗に並んで挨拶してくる。胸元で拳を握る、兵隊とか騎士がやるあの挨拶だ。
やめて。壁がガラス……スライム張りだから中から丸見えなのに、何してくれちゃってんだよ。
「お疲れ様。ここまでありがとうね」
咲樹が笑顔でお礼を言う。
心なしか衛兵達の顔が赤い。
「色々すまなかったな」
主に白い狼が、とは言わないでおこう。
「スライムなんて居たか?『しょきしま』だろ?」
スライムは最初に倒す敵の代表だ。
不思議な触り心地の壁に触れながら質問すると、ミロがプッと吹き出す。
振り返ると、ミロの後頭部を咲樹が叩いていた。
「ここのスライムは、とても強いので『しょきしま』ではなく、『しきしま』の後半以降に登場します」
レイの説明に、思わず目を見開いてしまった。
マジか!後半って事は、『いつきしま』に近い地域って事だよな。
俺のスライムに対する認識が覆った。
「幻想世界のスライムはね、エゲツないんすよ~。物理攻撃も殆ど効かないし、魔法も弾かれるし。特殊な薬が有効なんだけど、材料にスライム粉が必要で堂々巡りなんっすよね~」
おおぅ、それは大変そうだな。
スライム全てがメタルスライム並だと思えば良いのか?
倒せる気がしない。
<スライムは美味いからな。絶滅しないように進化したのだろう>
食ったのか!?ガルム。
<齧った時のプチッとした感触も、なかなかに良いからクセになるね>
物理攻撃ほぼ無効なスライムを、プチッといけるのかリルは。規格外だな。
<<良いな~食べてみたい~>>
今まで寝てたのに、いきなりフードから出てきて会話に参加ですか、テラさん。
<きゅ!>
リルの頭の上のヨミも同意するように鳴く。
皆、食いしん坊だな!
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