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逃げたい……けど、誰も同意してくれそうもないのはなぜだろう
127:ごめんなさい
しおりを挟む護衛のように、衛兵が周りを囲んで歩いている。そう、護衛だ。決して凶悪犯の包囲ではないはずだ。
ガルムやリルを見て、子供が泣き出しても、普段は開けているであろう店が扉を閉めたとしても、宿屋の呼び込みが店に逃げ入ったとしても、護衛だ。
「なあ、リルは子狼姿で良かったのでは?」
ガルムの上から、横を歩くリルへと声を掛ける。
リルの上には、衛兵に泣きつかれたレイ。
街中でリルのひとり歩きは、住民に不安を与えるとの事だ。俺の体は一つしかないからな。
<それではいざという時に周りが吃驚するから、我が従魔だと周知する為に元の姿で行こうと、先程皆で話し合ったのではないのかい?>
リルは本来の姿でこの口調だと、威厳がありすぎてちょっと引く。
「それはそうだが、その時は衛兵に囲まれるとは思っていなかったからな」
もうさ、ロイヤルパレードか世紀の大悪党の護送かのどっちかだよ、これ。
見物人の反応からすれば、後者だ。
たまに「うおぉぉ!」とか歓声上げてるのは異界人だろう。
また掲示板でレイがフェンリルを従えた~とか、嘘情報が蔓延するんだろうな。
今回は不可抗力。俺のせいではない。でも一応心の中で謝っておこう。
レイ、すまん。
<きゅ?>
やっと起きたらしいヨミが、胸元から顔を出した。どこここ?みたいな顔してる。
「ヨミ、起きたか?街に帰って来たぞ」
モゾモゾと這い出し、ガルムの上へと跳び降りる。
<きゅうぅう?>
<おぉ、良いぞ。頭でも背中でも好きな所へ乗ると良い>
どうやらヨミは、リルの上に乗りたいようだ。リルの許可を得てから、良い?みたいに俺の顔を見上げて首を傾げる。
可愛い。
「行っておいで」
俺の返答を聞いて、ポーンとガルムからリルへと跳び移って行った。
<きゅ、きゅ、きゅ~>
リルの頭の上でヨミが上機嫌で歌っている。
歌なのか?とにかく、何か嬉しそうに揺れながら鳴いている。
周りからの目が、先程よりも和らいだのは気のせいではないだろう。
さすがうちの癒し系No.1である。
さて、それではずっと気になってた事を聞いてみましょうか。
「ガルム。リルとはどういう関係だ?」
冥界繋がりなのは何となく判ったが、それだけだ。
<うむ。儂は冥界の門番だったのだが、ヘルヘイムではヘルの館に住んでおったのだ。ヘルはフェンリルの妹だからな。面識があったのだ>
「ヘルヘイム?地獄?」
<冥府と地獄は別物だな。ヘルヘイムとは、冥界の一部で……>
「ごめんなさい。もう大丈夫です」
神話とかの話ですよね?絶対。
郷里が同じ、お友達って事で充分です。
それで何の問題もありません。
俺にとっては、モフモフがモフモフモフモフになっただけです。
聞いておきながらアレですが、神話って面倒臭い!!
応援ありがとうございます!
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