ほんわりゲームしてます I

逃げたい……けど、誰も同意してくれそうもないのはなぜだろう

124：何も考えたくない

　


　ほっこり。眼福。癒される。
　ちょっとサイズがデカイけど。
　リルの上に銀狼レイが乗っている。
　リルが白に青の毛並みだから、銀色のレイと一緒にいると相乗効果で高潔な雰囲気すら感じてしまう。神聖味？
　聖獣って言われたら、信じそうだよ。

「ゆ、揺れ、揺れる！」
「わざ、と揺ら、してないで、しょう、ね！？」
　一緒に乗ってる二人が残念だが。
「リル、面白がって揺らさない」
＜はいはい＞
　俺に注意され、リルの走り方が跳ねた感じから普通になった。

「やっぱりわざとだったんじゃん」
　ミロが両手で顔を覆おおって泣き真似をする。
　走る獣けものの上で両手を離すって、体幹凄いな。
＜楽しくないかい？＞
　どこか嬉しそうにリルが言う。登場した時の印象と違い、大分フレンドリーだ。
　口調は最初からフレンドリーだったが。
「楽しいわけあるか～！」
　うん。仲良しだね、ミロ。

「銀狼レイは、何でそんなに普通に乗ってられるのよ」
　リルとミロの遣やり取りは完全にスルーして、ココアがレイに問い掛ける。
　確かに。レイはリルの首元というか、肩の上というか、その辺りにお座り状態で乗っている。背筋を伸ばして、ちょっと孤高の狼っぽい。
　レイはチラリとココアを見て、すぐに視線を前に戻してしまった。


「拗ねてるのよ、レイってば」
　咲樹がフフンっという音が聞こえそうなくらい、意地の悪い顔をする。ゲームが違えば悪役令嬢だな。
「今まではレイがガルムの飼・い・主・って勘違いさせる為に、ヴィンと一緒に乗るのは常にレイだったでしよ？それが今回は私だからね。しかもヴィン提案だから文句も言えないし」
　そうなのか！？さっきの俺の感動を返せ。
　孤高の狼とか思っちゃったぞ。

「俺がリルに乗るのは無理だから、諦めろ。レイ」
　ガルムは上下にブレない静かな走り方をするが、リルは気ままな野生動物な走り方をする。
　俺が乗ったら、間違いなくふり落とされる。
　そして怒ったヨミとテラがリルを攻撃する姿までがワンセットだな。
　ガルムは、落ちた俺の救出だか回収だかをする係だ。


レ　イ：拗ねてませんよ。ただ、こういう方がヴィンは好きそうだなって思っただけです


　吹き出した。
　ブフォ！って、音がするくらい吹き出した。
「何言ってんだ？レイ」
　いや、確かにさっき格好良いなぁとか、神聖な雰囲気だなぁとか思ったよ！？
　それがまんまとレイの策に嵌はまってたのかと思うと悔しい。
　ってか、考えが読まれ過ぎてて恥ずかしい。
　居た堪れない。

＜主あるじ、道が見えて来たが、このまま行って良いのか？＞
　恥ずかしさに悶絶していると、ガルムが声を掛けてきた。
　ガルムにモフンと抱き着く。
　服の中のヨミが起きて＜ぎゅ＞と鳴いた。ごめん。
「もう、好きにして」
　ガルムとリルの好きにすれば良いよ。意思ある乗り物の特権で。
　俺は、しばらく何も考えたくありません。