上 下
122 / 506
逃げたい……けど、誰も同意してくれそうもないのはなぜだろう

122:悪評高き狼

しおりを挟む
 


<我も一緒に行く事にするよ>
 胸元の子狼が宣言する。
 可愛い。ちょっと偉そうで丁寧な王子様口調と、どう見ても子狼のアンバランスが尚可愛い。
<フェンリル。ヘル探しは良いのか?>
 ガルムの問いに、子狼姿のフェンリルが首を振る。
ヘルは嫌な事は絶対にしないからね。今頃は好きな事をしてる事だろう>
 そうですね。今頃は『にきしま』で、新人の異界人プレイヤーを恐怖におとしいれていると思います。
<暇つぶしで探していただけだし、他に楽しい事があるなら構わないよ>
 フェンリルが俺の顔を見上げる。
 キラキラした瞳で見上げられても、困る。

「オレちゃん、何を見せられてるんだろう~」
 酷く疲れたミロの声が聞こえる。
「軽い気持ちで大型魔獣狩るなんて言わなきゃ良かった。ヴィンがいなければ死んでたわ」
 ココアが自分の体を抱きしめる。
 可愛い女性がすれば萌えだが、今はゴツいおにーさんだからな。あまり見たくないかな。うん。

「大丈夫ですか?ヴィン」
 レイの問いに、ヨミとテラを見て、フェンリルを見る。
「落ち着いてるから大丈夫じゃないか?」
 もう死闘の心配は無さそうだ。
「そうじゃないわよ!ステータス確認した!?」
 咲樹に怒鳴られ、問いの意味が違う事に気付いた。


 ステータスを開く。
 あぁ、残念な事になっている。
 だって、ズルく無いか?あの恐怖を体現した姿から、瞳キラキラの子狼だぞ!?

 従魔に『フェンリル』が増えていた。
 フェンリルは種族名ではなく、個体名のようだ。
 フローズヴィトニル(悪評高き狼)が種族名って事は、スコルとハティもどこかにいるのか?

 これで俺の従魔は全部で四匹。
『番犬 ガルム』
『アルミラージ(変異種) ヨミ』
『ドラゴネット テラ』
『フローズヴィトニル フェンリル』
 国取りできそうなレベルじゃないか?やらないけど。
 しかしフェンリルって色んな意味で呼びにくい名前だよな。有名だし。略しちゃ駄目かな?

「なあ、フェンリルって呼ぶ時に略しちゃ駄目か?とか、とか」
 胸元にいるフェンリルの頭を撫でる。
<あぁ、別に構わないよ。まあ、フェンよりはリルの方が良いかな>
「そうか、ありがとう。」
 お?表示が変わった。
『フローズヴィトニル フェンリル(リル)』になった。
 名付けではないから、表示が皆とは違うようだな。



 街に帰ったら、まず冒険者ギルドへ行ってリルの従魔登録をして、爺さんタカアシガニの店に行ってチェーンを買って、後はクラン証の発行もお願いしなきゃな。
 従魔登録の時は、子狼の姿で良いのか?それとも元の姿か?
 そういえば、ヨミの大きい方の姿も見せてないな。
 どうせなら一気に終わらせるか。
 しかし、ガルムとリルの二匹一緒にギルドに入れるかが心配だな。

 とりあえずレイが居るから、リルがクランハウスに入る事はできるし、『industry(インダストリィ)』まで帰って転移屋にクランハウスまで送って貰えば良いのか。
 それで『commerce(コマース)』のギルドに転移して、従魔登録すれば良いのか?
『industry(インダストリィ)』にも冒険者ギルドとクラン証発行所は在るか?
 とりあえずは、街に入る時の衛兵が第一関門だな。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生王女は現代知識で無双する

紫苑
ファンタジー
普通に働き、生活していた28歳。 突然異世界に転生してしまった。 定番になった異世界転生のお話。 仲良し家族に愛されながら転生を隠しもせず前世で培ったアニメチート魔法や知識で色んな事に首を突っ込んでいく王女レイチェル。 見た目は子供、頭脳は大人。 現代日本ってあらゆる事が自由で、教育水準は高いし平和だったんだと実感しながら頑張って生きていくそんなお話です。 魔法、亜人、奴隷、農業、畜産業など色んな話が出てきます。 伏線回収は後の方になるので最初はわからない事が多いと思いますが、ぜひ最後まで読んでくださると嬉しいです。 読んでくれる皆さまに心から感謝です。

ーOnly Life Onlineーで生産職中心に遊んでたらトッププレイヤーの仲間入り

星月 ライド
ファンタジー
親友の勧めで遊び、マイペースに進めていたら何故かトッププレイヤーになっていた!? ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 注意事項 ※主人公リアルチート 暴力・流血表現 VRMMO 一応ファンタジー もふもふにご注意ください。

VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件

こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。 だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。 好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。 これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。 ※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ

運極ちゃんの珍道中!〜APの意味がわからなかったのでとりあえず運に極振りしました〜

斑鳩 鳰
ファンタジー
今話題のVRMMOゲーム"Another World Online"通称AWO。リアルをとことん追求した設計に、壮大なグラフィック。多種多様なスキルで戦闘方法は無限大。 ひょんなことからAWOの第二陣としてプレイすることになった女子高生天草大空は、チュートリアルの段階で、AP振り分けの意味が分からず困ってしまう。 「この中じゃあ、運が一番大切だよね。」 とりあえず運に極振りした大空は、既に有名人になってしまった双子の弟や幼馴染の誘いを断り、ソロプレーヤーとしてほのぼのAWOの世界を回ることにした。 それからレベルが上がってもAPを運に振り続ける大空のもとに個性の強い仲間ができて... どこか抜けている少女が道端で出会った仲間たちと旅をするほのぼの逆ハーコメディー 一次小説処女作です。ツッコミどころ満載のあまあま設定です。 作者はぐつぐつに煮たお豆腐よりもやわやわなメンタルなのでお手柔らかにお願いします。

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

生産職から始まる初めてのVRMMO

結城楓
ファンタジー
最近流行りのVRMMO、興味がないわけではないが自分から手を出そうと思ってはいなかったふう。 そんな時、新しく発売された《アイディアル・オンライン》。 そしてその発売日、なぜかゲームに必要なハードとソフトを2つ抱えた高校の友達、彩華が家にいた。 そんなふうが彩華と半ば強制的にやることになったふうにとっては初めてのVRMMO。 最初のプレイヤー設定では『モンスターと戦うのが怖い』という理由から生産職などの能力を選択したところから物語は始まる。 最初はやらざるを得ない状況だったフウが、いつしか面白いと思うようになり自ら率先してゲームをするようになる。 そんなフウが贈るのんびりほのぼのと周りを巻き込み成長していく生産職から始まる初めてのVRMMOの物語。

処理中です...