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逃げたい……けど、誰も同意してくれそうもないのはなぜだろう
122:悪評高き狼
しおりを挟む<我も一緒に行く事にするよ>
胸元の子狼が宣言する。
可愛い。ちょっと偉そうで丁寧な王子様口調と、どう見ても子狼のアンバランスが尚可愛い。
<フェンリル。ヘル探しは良いのか?>
ガルムの問いに、子狼姿のフェンリルが首を振る。
<妹は嫌な事は絶対にしないからね。今頃は好きな事をしてる事だろう>
そうですね。今頃は『にきしま』で、新人の異界人を恐怖に陥れていると思います。
<暇つぶしで探していただけだし、他に楽しい事があるなら構わないよ>
フェンリルが俺の顔を見上げる。
キラキラした瞳で見上げられても、困る。
「オレちゃん、何を見せられてるんだろう~」
酷く疲れたミロの声が聞こえる。
「軽い気持ちで大型魔獣狩るなんて言わなきゃ良かった。ヴィンがいなければ死んでたわ」
ココアが自分の体を抱きしめる。
可愛い女性がすれば萌えだが、今はゴツいおにーさんだからな。あまり見たくないかな。うん。
「大丈夫ですか?ヴィン」
レイの問いに、ヨミとテラを見て、フェンリルを見る。
「落ち着いてるから大丈夫じゃないか?」
もう死闘の心配は無さそうだ。
「そうじゃないわよ!ステータス確認した!?」
咲樹に怒鳴られ、問いの意味が違う事に気付いた。
ステータスを開く。
あぁ、残念な事になっている。
だって、ズルく無いか?あの恐怖を体現した姿から、瞳キラキラの子狼だぞ!?
従魔に『フェンリル』が増えていた。
フェンリルは種族名ではなく、個体名のようだ。
フローズヴィトニル(悪評高き狼)が種族名って事は、スコルとハティもどこかにいるのか?
これで俺の従魔は全部で四匹。
『番犬 ガルム』
『アルミラージ(変異種) ヨミ』
『ドラゴネット テラ』
『フローズヴィトニル フェンリル』
国取りできそうなレベルじゃないか?やらないけど。
しかしフェンリルって色んな意味で呼びにくい名前だよな。とても有名だし。略しちゃ駄目かな?
「なあ、フェンリルって呼ぶ時に略しちゃ駄目か?フェンとか、リルとか」
胸元にいるフェンリルの頭を撫でる。
<あぁ、別に構わないよ。まあ、フェンよりはリルの方が良いかな>
「そうか、ありがとう。」
お?表示が変わった。
『フローズヴィトニル フェンリル(リル)』になった。
名付けではないから、表示が皆とは違うようだな。
街に帰ったら、まず冒険者ギルドへ行ってリルの従魔登録をして、爺さんの店に行ってチェーンを買って、後はクラン証の発行もお願いしなきゃな。
従魔登録の時は、子狼の姿で良いのか?それとも元の姿か?
そういえば、ヨミの大きい方の姿も見せてないな。
どうせなら一気に終わらせるか。
しかし、ガルムとリルの二匹一緒にギルドに入れるかが心配だな。
とりあえずレイが居るから、リルがクランハウスに入る事はできるし、『industry(インダストリィ)』まで帰って転移屋にクランハウスまで送って貰えば良いのか。
それで『commerce(コマース)』のギルドに転移して、従魔登録すれば良いのか?
『industry(インダストリィ)』にも冒険者ギルドとクラン証発行所は在るか?
とりあえずは、街に入る時の衛兵が第一関門だな。
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