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逃げたい……けど、誰も同意してくれそうもないのはなぜだろう
118:冒険者の醍醐味?戦闘?無理だ
しおりを挟む街を出てすぐ、街道を逸れて森の中へと向かう。
本来の冒険者としての醍醐味は、自分の足で歩いて新たな地に向かう事なのだろうが、俺にはそんな根性は無い。
一応、街中仕様の動物パーカーではなく、冒険仕様の装備には着替えているが、ガルムの上にいるのであまり意味は無いかもしれん。
「ヨミ、ガルムの邪魔するなよ」
ヨミは、なぜかガルムの頭の上へ行き、楽しそうに飛び跳ねている。
<きゅ?>
邪魔?みたいな雰囲気で首を傾げているヨミ。可愛いけど、駄目だろ。
<そのサイズなら、顔の方へ来なければ儂は構わん>
ガルム!相変わらず漢前!!
<<ボクは?ボクは~?>>
ガルムの顔の右上辺りを飛んでいたテラが会話に参加してきた。
<乗りたければ、乗るが良かろう>
<<わ~い!ヨミ、一緒に乗ろう~>>
ガルムの頭の上、ヨミの隣にテラが着地した。
<きゅ>
ヨミも快く迎えている。
何だろう。この緊張感の無さは。
遠足に来ている子供のようだ。
「緊、張、感!」
ミロが拳を握り締め、眉間に皺を寄せて目を閉じクッ!みたいな表情をしている。
「ヨミが小さいままなので、危険が無いと判断しているようですね」
レイが冷静に返しているが、スルーしてやった方が親切では?
「冷静な分析いらない~」
ほらな。
川が近いのか、空気がだいぶ湿り気を帯びてきました。日の光を通さないくらい、木が鬱蒼と茂っております。
足元が微妙に明るいのは、光苔だか光茸だかが生えているからです。
あぁ、そんな環境でもガルムはモフモフで気持ち良いなぁ……
「ヨミちゃ~ん、グロいよ!足、齧り切っちゃダメ!」
ミロが叫んでいる。
「足止めは基本よ!良くやったわ、ヨミ」
逆にココアはヨミを褒めた。
何と戦ってるんだろうな。
生木を折るような音は、ココアが何かを折ったのだろう。
「そっちは大丈夫?森の中って火魔法使えないのよね。んもう、トレント鬱陶しいわ!」
咲樹が戦っているのはトレントか。俺でも知ってるメジャーな木の魔物だ。
「普段より敵が強い気がしますね」
スパスパと小気味良い音は、レイが剣で枝を切ってるのだろう。
<<ねぇ、行っちゃダメ~?>>
俺の腕の中でテラがソワソワしている。
テラの吐く毒霧が、環境にどれだけ影響を及ぼすのかわからないので、今回は不参加となった。
「毒霧吐かないなら良い……かな?」
そっと覗き見る。
バカでかいトレントと、蔓を伸ばして攻撃してくる頭に花の咲いた人型の魔物がいた。
人型の方は片足が足首から無く、もう片足は太腿から変形しているのだが……蔓で体を支えてるんだろうな。
トレントもほとんど枝が無いし、切り倒したら材木に使えそうだ。
<テラが行くまでもない。もうすぐ終わるだろう>
戦況分析をしたガルムが言う。
ガルムは今、丸まって俺を抱え込んでいる。
本来もう少し奥にいるはずの魔物だった為、念のためにガルムが俺の護衛として残ったのだ。
ドガンと何かがぶつかる音が森に響き、静かになった。
ガルムの言ったとおり、戦闘が終わったのだろう。
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