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逃げたい……けど、誰も同意してくれそうもないのはなぜだろう
116:特別な存在(笑)
しおりを挟む「何これ?」
時間ピッタリに噴水前に来た咲樹の第一声。
ガルムと銀狼になったレイに挟まれた、胸元にヨミがいる俺。
ガルムにブラッシングしているミロとココア。
その傍でテラの採寸をしている斗苫斗的。
「二人は、レイの逆鱗に触れたようです」
俺の生真面目な説明に、銀狼がスリッと頬擦りしてくる。正解って事なのだろう。
「そう。それならしょうがないわね」
え?それで納得しちゃうのか、咲樹。
「で?この子は?」
咲樹の視線が斗苫斗的に向く。
「さっき知り合った。ハーフリングの斗苫斗的だ」
名前を言われて振り向いた斗苫斗的が、咲樹の存在に気付く。
面白いくらいに目を見開き、みるみる真っ赤になっていく。
レイに気付いた時も硬直して面白かったが、今の反応はそれ以上だ。
「あ、ぼ、僕は、とうま、違っ、と、と斗苫斗的です」
うん。全然何言ってるかわからない。「と」が多い。多過ぎる。
実は【cinq(サンク)】の大ファンだったらしい斗苫斗的。特に咲樹が推しのようだ。
場所を移動して、広場?公園?とにかく他人の邪魔にならない所に落ち着く。
周りが生垣よりはちょっと大きめな樹木に囲まれている、住民の憩いの場的な場所のようだ。
俺はガルムソファに座って、その両脇にレイと咲樹。
斗苫斗的は、その向かい側に座っている。
ミロとココアは、レイに命令されて飲み物を調達しに行った。手持ちに飲み物あるのにな!まだお許しは出ていないようだ。
「ハーフリングでも子供じゃないのね」
咲樹が斗苫斗的を見ながら感心したように言うが、それはどういう意味かな?
「でも僕、童顔なので……24歳なんです」
斗苫斗的が顔を赤くして、照れた仕草で頭を掻きながら言う。
ほほぅ。宣戦布告だな?
「27歳だが、何か?」
ここで煙草の煙でも顔に吹き掛けられれば面白いのだが、現実でも喫煙していないのでできない。
「ヴィンは可愛いので、問題ないですよ」
レイがニッコリ微笑みながら意味不明な事を言う。
<うむ。主は特別だからな>
ガルムまで、何を言ってる!?
「ヨミ、丸まれ」
<きゅ!>
小さく丸まったヨミをレイの顔に投げつける。レイの顔にぶつかったヨミは、クルリと回転してレイの頭に着地した。
本物の兎でやったら虐待だが、魔獣のヨミにとっては、遊びの一環だ。
「ご褒美ですか?」
「違う」
嫌がらせのつもりだったが、レイにはご褒美だったらしい。
<きゅきゅ>
ヨミが嬉しそうだから、まぁ良いか。
テラが俺の膝の上で丸まった。
これは、自分も投げろという事だろうか?
ワクワクしている雰囲気が伝わってくる。
「しょうがないな」
羽根も尻尾も頭も上手く丸めてボール状になったテラを、咲樹の顔に投げつけた。
「ちょ!痛……くはないけど、何で!?」
痛みは無いけど衝撃はあったのか、咲樹が顔を覆う。
「いや、テラが自分も投げろと……」
<<楽しかった!>>
「楽しかったらしいぞ」
咲樹の顔の前にテラがフワフワと浮かんでいる。
「そうなの?」
咲樹の問いに、テラがコクンと頷く。
「なら良いわ」
「良いんですか!?」
斗苫斗的のツッコミに、何が変なのかわからない俺達は、三人と三匹で首を傾げた。
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