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逃げたい……けど、誰も同意してくれそうもないのはなぜだろう
114:お互い様だが……すまん
しおりを挟む従魔を呼ぶ事ができなくなった俺は、ひとり淋しく噴水の縁に座っている。
街を散策するには、自分の実力に不安があった。従魔が居てこそのテイマーである。
水が掛かる心配はないが、なんとなくパーカーのフードをかぶっていた。
黒狼バージョンの動物パーカーである。
一度ログアウトして、時間ピッタリに入り直そうかと思った瞬間、目の前に人がしゃがみ込んだ。
「迷子?」
ボーイッシュな美少女にも、中性的な美少年にも見えるが、どっちだ?
鑑定すると異界人と出た。
完全に目が合ってるし、この問い掛けは俺になのだろうな。目の前に座って、違ったらそれはそれで怖い。
「いや、人との待ち合わせだ」
相手も俺を鑑定して、異界人だとわかっているだろう。
「お友達と?一人で?危ないよ」
「人間の子供ではなく、俺はハーフリングだ」
失礼なヤツだな。そんなに驚く事はないだろうが。
「マジか!僕以外のハーフリングって初めて会った!」
マジか!?え?ハーフリングって、こんなに顔立ちが大人っぽくなるものなのか。いや、それでも高校生くらいにしか見えないけどな。
しゃがんでるからよくわからなかったが、確かに身長は小さい。
噴水の縁から降り、横に並んだ。俺の動きに合わせて、相手も立ち上がる。
まったく同じ身長だ。視線の高さが同じだ。
「何歳設定にしたの?」
可愛く首を傾げて聞いてきた。
「設定はいじっていない」
「18歳!?童顔だね~」
なぜ18歳だと思った?幻想世界に入れる最低年齢だからか?
これは、俺に喧嘩を売っているとみなして良いのだろうか?
同じハーフリングで聞いてきてるんだからな。宣戦布告だよな。
目の前にギルドカードを突き出した。
直角90度のお辞儀って、初めて見たな。意外と間抜けだな。
「大変申し訳ありませんでした」
傍からはどう見えているんだろうか。子供の喧嘩か?
「もう慣れたから良い」
内心良くないので、追い払うように手を振ってしまったのはしょうがないだろう。
同じハーフリングのくせに、ちくしょう。
目の前のハーフリングを無視して、また噴水の縁へ座った。大人気ないのはわかっているが、同じハーフリング相手なのが何かもう、アレだ。察してくれ。
俺の動きに気付いたのだろう。相手も体勢を戻す。
顔だけ見れば高校生くらいだが、身長が低いので12、3歳に見える。ハーフリングだから、頭身が少ないんだよな。
「初めまして。ととまとまとと申します」
名刺のようにギルドカードを差し出してくる。社会人決定。
受け取って確認すると、どこかで見た事ある文字が……
『斗苫斗的 錬金術師 24歳』
意外と年が近かった。
そうか。カードに違和感があったのは冒険者ギルドのカードではなく、工業ギルドのカードなのだろう。ん?商業か?まぁ、どっちでも良いか。
とりあえずカードを返す。
そしてこれだけは言っておこう。
「正直、すまんかった」
俺からカードを受け取った斗苫斗的は、キョトンとした顔をしていた。
それはそうだ。
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