112 / 506
逃げたい……けど、誰も同意してくれそうもないのはなぜだろう
112:思考と嗜好
しおりを挟むチーズインハンバーグが美味かった。
あと、生しば漬け。現実だと、京都とかで売ってる酸っぱいしば漬け。
やっぱ日本酒欲しいな。
それはともかく、テーブルの上には、それぞれの飲み物とツマミのいかり豆だけだ。
あとは、レイが出した地図。
「で、この辺が血みどろの丘っしょ」
ミロが勝手に丘に名前を付けている。キングウルフとワーウルフを殲滅したあの場所の事だ。
「ここが今いる街『industry(インダストリィ)』で……」
地図に書かれている街名の下に線を引く。
「元いた街の『commerce(コマース)』がここ!」
同じように街名に線を引いた。
地図を見ると、川は2本あった。厳密には途中で合流するのだが、この街近辺では別の川と言って良いだろう。
「問題はどっちの川かよね」
ココアがいかり豆をポリポリ食べながら言う。いかり豆って、その茶色い皮部分は捨てるんじゃないのか?
「近い方って言いたいところだけど、どっちも似たような距離なのよね」
地図を指差す咲樹の爪には桜が描いてあって、つい目がいく。
来年は花見に行きたいな。ここでも現実でも。
「ヴィン、集中して聞いてます?」
レイからのツッコミがきました。
すみません。ちょっと上の空でした。
いや、だってね。俺は戦闘は従魔任せだし、初めての場所だから土地勘ないし、この土地にいる魔獣すらよく判ってないのだぞ?
意見なぞ無いに等しいに決まってる。
「ガルムの行きたい方で良いのでは?」
適当なやつですみません。
「そうっすね!んじゃ、決まり!」
あ、決まっちゃいました。
居酒屋の支払いは、ウルフどもを売った金で足りたようで、またしても支払いをしていない。
皆は「ほとんど従魔が倒してたから、むしろご馳走様!」と言っていた。
じゃあ俺のギルドカードの中にある、現実だったら速攻仕事を辞めているレベルの金額の金は、誰が稼いだんだ?って話だが……
堂々巡りになりそうだから、もう良いや。
とりあえず、一旦ログアウトしてから3時間後に、街の噴水集合になった。
街中もまだほとんど見てないし、工業の街ならではの買い物とかしたいな。
この街に入ってガルムが入れるサイズの飲食店を探している時に、かき氷機を衝動買いしたのは良い思い出だ。
あのプロ仕様の、手で回すフワフワかき氷のできるヤツだ。
店主が「大人にやってもらえよ」と言った瞬間、目の前にギルドカードを突き出したのも、今では良い思い出だ。いや、嘘だ。さすがにまだちょっと怒ってる。
お詫びだと、オマケで奥さんお手製のあずきをくれたので、水に流したけどな。
どこかで練乳も買わないとな。
かき氷と言えば、抹茶あずきの練乳かけだろう!
玉子焼きはしょっぱい派だが、甘味はほぼ何でもいける。なんなら、スイーツビュッフェで元が取れる程度には食う。
でも甘い飲み物は、いまいち好きではない。
なんだそりゃ、とツッコミをよく貰うが、嗜好なのだから説明のしようがないな。
応援ありがとうございます!
139
お気に入りに追加
1,000
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる