111 / 506
逃げたい……けど、誰も同意してくれそうもないのはなぜだろう
111:召喚獣
しおりを挟むHP、MP、EPの他にSpirit(精神)Pointとかあったら、今頃俺は瀕死だと思う。
隣のテーブルにいたちょっとお年を召した女性が「ほらほら、夫婦で子供の取り合いなんてしないのよ」と、言い合いをしていたレイと咲樹の二人を宥めたからだ。
この場合、夫婦と言われた二人よりも、子供と言われた俺のダメージの方がデカイ。
現実と違い、ジョッキがガラスではないので、何を飲んでいるのか見えなかったのも悪いのだろう。
いや、見えていたら取り上げられて、もっと精神的ダメージを受けたかもしれん。
「プププ……食べますか?」
ココアが新しく届いた玉子焼きを俺の前に置く。
「いらん。そして、笑いたいなら笑え」
それを頼んだのはミロだ。そして、砂糖入りの甘い玉子焼きだと店員が説明していたから、尚更いらん。俺は、チーズとかが入ったしょっぱい玉子焼き派だ。
「もう、機嫌直してよ~ヴィン~」
咲樹が話し掛けてくるが、とりあえず無視だ。コイツ、隣のおばちゃんに「子供が可愛すぎていつも取り合いになっちゃうんです」とか笑顔で言いやがったのだぞ。
場を収める為とはいえ、他になかったのか!?
レイは、こういう時は何を言っても墓穴を掘ると知っているので、ずっと無言だ。
「まぁまぁ、オレの子が戻って来たから、話聞こうじゃ~ん」
ミロの指示で、テーブルの真ん中を空けてコースターを置く。
その上に、小さなネズミ?コウモリ?翼のある小動物が降り立った
「鳥兜、なんかわかった?」
トリカブト?兜を被った鳥か、これ!
『大キイ魔獣、ガルム、違ウ。白イ、街ヨリ川、狼』
「それって、銀狼の事じゃね?」
ミロがレイを親指で指し示す。
『違ウノ。ガルム、同ジ、大キイ』
やばい。鳥兜、可愛い。小鳥のあのピチピチ言う声で、舌っ足らずに報告してる。
「ヴィン、話の内容はちゃんと頭に入ってますか?」
こっそり耳元でレイに注意される。
すまん。あまり入ってきてないな。
「明日は川の方に行ってみる?白い大きな狼が居るかもよん」
鳥兜に甘い玉子焼きをあげた後、ミロが提案してきた。
玉子焼きを食べ終わった鳥兜は、魔法陣に吸い込まれるように消えていった。これが召喚獣と従魔の違いなのだろう。用事が終わると強制的に戻るようだ。
しかし、川の方って軽く言ってるけど、川ってどこかにあったか?あの高台から見ても、川なんてなかったよな。
あ、地図!前にレイが丸付けてた地図があるはずだ。
「レイ、地図は?」
「ありますよ」
インベントリから地図を取り出したレイは、そのままインベントリへと戻した。
何してるのかな?レイさんは。
「とりあえず、テーブルの上を片付けましょうか」
言われて、テーブルへと視線を向ける。テーブルの上は、所狭しと料理が並んでいた。
うん。そうだったな。
俺とココアが盛り上がって、やたらと料理を注文したな、そういえば。
「あ、そのプリンはアタシのですよ」
「そのチーズ揚げ、オレ食べちゃうから取って!」
「はい、ヴィン。あ~ん」
「咲樹、自分で食べろや」
「オムライスいる人、取り分けますよ」
全員が手を上げる。
ため息を吐きつつも、全員に少しずつ取り分けるレイがいた。
257
お気に入りに追加
1,456
あなたにおすすめの小説

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜
言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。
しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。
それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。
「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」
破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。
気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。
「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。
「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」
学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス!
"悪役令嬢"、ここに爆誕!

ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!

あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果
安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。
そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。
煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。
学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。
ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。
ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は……
基本的には、ほのぼのです。
設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる