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逃げたい……けど、誰も同意してくれそうもないのはなぜだろう
108:絶景かな、絶景かな。現実逃避かな
しおりを挟む「おぉ~!絶景!」
クランハウスから『commerce(コマース)』とは反対方向へと街道を進んで行くとある、とても広い小高い丘の上に俺はいた。
自力で登ったら多分へばるけど、ガルムに乗っての行軍だったから全然平気だ。
「あ~綺麗な景色だな~!」
足下に広がるのは、緑深い森。
森ってより、樹海に近いのかな?
「あぁ、空気も美味し……ゲホッ!」
深呼吸しようとして、咽せた。
風向きが変わったのか、鼻の奥に纏わりつく鉄臭。
そぉっと後ろを覗き見る。
某有名RPGの忙しないBGMが頭の中に聞こえた気がした。
アイテムドロップ方式なので、毒の攻撃をしても肉に影響ないと判ってから、テラの攻撃は毒系統が多くなった。死ぬまでドロドロと溶け続ける毒は、俺の精神衛生上止めて欲しいところである。
ヨミの攻撃も進化し、角で刺してブン投げるだけでなく、蹴ったり噛んだりが増えた。字面は可愛いけど、蹴ったら体があらぬ方向へ折れるし、噛んだ部分は引き千切られると言っても過言ではない。
ガルムは安定のガルムなので、もう、圧倒的な強さだ。何で『しきしま』で満足しているんだろう?と正直思っている。
好戦的かと思いきや、そうでもないようだし。
<<ガルム~!どっちが一撃で多く倒せるか勝負しよ~?>>
テラの不穏な台詞が聞こえてくる。
<む?儂は斬撃を出せば良いのか?魔法では、全滅させて勝負にならんからな>
ちょ!何、やる気になってるの!?
<きゅうぅ……>
ヨミまで参加?
<仕方あるまい。ヨミは範囲攻撃出来ないのだから>
あ、参加できない不満でしたか。って、そうじゃない!!
やっぱり好戦的でした!うちの従魔達!!
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どちらも群れる習性なので、仲間を呼ぶ。それを利用して、わざと敵を増やして倒していたのは誰の発案なんだ?
ドロップアイテムの牙や皮が、どう見ても3桁有る。倒したら必ずドロップするわけじゃないから、確実にアイテム数よりも倒しているはずだ。
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自然に消えるわけではなく、咲樹が魔法で消してくれたんだけどな。感謝。
「もうそろそろ慣れても良い頃じゃない?」
両手を腰に置いて胸を張っている姿は、子供を叱るお母さんのようだ。本人には言えないが。
「いやいや。俺はモフモフの為にここにいるのだからな」
咲樹に綺麗にしてもらったヨミが胸元に跳んできた。そのままモゾモゾと服の中に入って行く。
そう。これを堪能しにきたのだ。
決して狼よりデカいモノをドロドロに溶かしたいとは思っていない。
「そういえば、どっちが勝った?」
一応勝敗は気になるので、ガルムに聞いてみる。
<テラの毒霧が強すぎて、骨も残らなかったのでな。正しい数がわからなくなったので、引き分けだ>
はい?何か言いました?
骨も残らない毒って何?硫酸的な感じ!?
<<あのね~周りの環境には影響ないから大丈夫なんだよ!!>>
元気にテラが説明してくれてるけど、それって対人戦闘じゃ使っちゃダメなレベルだよね。
それとも対魔物にだけ効きが良いのか?
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