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クランハウスに行く為に『しきしま』目指して頑張りま……す?
36:買い物に来たはずだが……
しおりを挟むタコ焼きが、予想以上に美味かった。今度はちゃんと金を払って食おうと思う。
ヨミも俺の胸元で嬉しそうに食べてる。
「って、こぼしてる!こぼしてる!!」
タコ焼きのソースがヨミの咥えたタコ焼きから垂れて、俺の服を汚していた。
しかも今じゃない。最初からこぼしてただろ、お前。
<きゅ~>
耳をぺターンて伏せて情けない声を出すヨミ。いや、そこまで落ち込まなくても良いぞ。
服なんて洗えば良いだけだからな。
でも俺はまだ生活魔法で洗うなんて出来ないし、買っちゃうか?
「ヨミ、服買いに行くか!」
<きゅ!>
まだ待ち合わせには時間がある。さぁ、今度は服屋だ!
普通の服、それこそ地味なパーカーが欲しかったんだ、俺は。胸元にヨミを入れる前提だから、シャツとかカッチリした系よりも、ラフな系統の服屋を選んで見ていた。
住人の店より異界人の店の方がオシャレだし、物によっては戦闘でもいけそうな高レベルの服も置いてあるから、積極的に入ってたよ。
でもさ、店に入った途端に「あなたの為に作りました!」とウサギパーカーを出されたら、殴って良いよな?
セーフ機能オンなので実際には殴れないが、気持ち的にはグーパンだ。
俺の目の前には、腰を90度に折り曲げ、白いベロア地のウサギパーカーを掲げる男がいる。
顔は見えないが、多分年下。いや、自分の事を棚上げしちゃいかんな。
「おい、27のおっさんに何着せようとしてんだ」
とりあえず牽制。
「27?現実年齢の話ですか?」
男が顔を上げた。
何かキラッキラしてんだけど、何の種族だ?とにかく色素が薄い。
「リアルも何も、現在進行形で27歳だ」
ギルドカードを見せる。年齢が表示されてるからな。
「年下かと思ってた……」
おい。聞こえてるからな、小声で言っても。
キラキラしいこの男は、天使で服飾師の綺羅というそうだ。キラキラしてるからか!とツッコミ入れたら「本名が吉良上野介の吉良なので」といらん情報をくれた。
「噴水で見かけて、いつかうちの服を着てもらおうと作りました!」
「噴水って『さんきしま』で落ちた時か?」
今朝の事だけど、こっちでは2日前?3日前か?
「いえ、この街の噴水前です」
爽やかな笑顔でとんでもない事言ってるな、この男。俺がタコ焼き食べて、ほんの数件の店を見ている間に、このウサギパーカー作ったのかよ。
結果。ウサギパーカー貰いました。
だって、凄いハイスペックだったんだ。
防寒防水防炎防熱防汚。フード部分を被ると、状態異常も多少防ぐとか、見た目と違って高性能過ぎ。
汚れも、軽く払う程度で落ちるとか、凄くない!?
しかも、首元にヨミが入る前提の作りなので、ちゃんとゆとりがあるのだ。
犬型のパーカーも作ると言うので、ID交換をした。初のID交換がこんな理由で良いのかと、ちょっと思ったけど気にしない事にした。
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