ほんわりゲームしてます I

仲村 嘉高

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クランハウスに行く為に『しきしま』目指して頑張りま……す?

24:食料のつもりだったらしい

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 俺に向かって跳んできた毛玉は、スポンと俺の胸元に収まった。
 体をこれでもかと小さく丸めて、ブルブルと震えている。
「お前ら、何やったのさ」
 この怯え方、尋常じゃないんですけど。

<何もしておらん。たまたま見つけた狼の群れの中に紛れておっただけだ>
 狼の子!?
「狼じゃなくてキングウルフな!玩具おもちゃにしようとソレを追いかけてたんだろうけど、俺達に狩られる側になっちまったようだぜ!」
 人型に戻ったユズコが顎に手を当てて、妙に格好つけて言う。

 後で知ったが、狼は動物でキングウルフは魔獣というくくりで、まるっきりの別物だった。

「とりあえず、洗わないと怪我してるのかもわからんな」
 胸元から離そうとすると、凄い抵抗された。むしろ服の中に入ろうと首元に顔を突っ込んでくる始末。
 付いている血は完全に乾いているので、今現在出血はしてないようだけどな。

「綺麗になったら入れてやるから!」
 俺の言葉に、毛玉がピタリと動きを止める。首元に突っ込んでいた顔を上げ、ホント?と擬音が付きそうな目で見上げてける。
 正直、汚な過ぎて表情は判んないけどな。

「咲樹、さっきの洗うのやって」
 毛玉を持って両腕を伸ばす。
「良いけど、下に置いてもらった方が楽なんだけどな」
 そっと下に降ろそうとしたけど、俺の腕にしがみ付いてきて無理だった。うん。だと思った。
「とりあえず、頑張れ」
 もう一度持ち上げて腕を伸ばした。


 ミストが毛玉の周りを包んでグルグル回る。先程の三人とは比べものにならない位にミストが汚れていく。俺自身の腕も見えないくらいだが、濡れた感触はない。
 対象物だけを洗うので、俺は含まれないらしい。魔法、不思議。

 汚れた水が消えると、淡い黄色の毛玉があった。
 ま さ か の、き い ろ。
 そして、長い耳。
 驚いている間に、咲樹が温風で毛玉を乾かしてくれる。

 おでこに小さい角のあるウサギでした。

「お~綺麗になったな」
 ふわふわになった毛玉を胸元に抱きしめると、待ってました!とばかりに首元から服の中に入って来た。
 服の中でクルンと一回転して、首元からちょこんと手と顔を出す。
 コレ、絶対可愛いヤツ!自撮り!自撮り機能はないのか!?

「いやぁん。可愛い~~」
 ウィンドウを出して、何かパシャパシャやってるヤツが既にいたよ。
「咲樹、俺にも回してね」
 ここは怒るより共有を選んだ。洗ってもらった恩もあるしな。

<食わんのか?>
 え?ちょっとガルムさん?何不穏な事言ってるの?
「このふわふわでモフモフの可愛い兎を食うと!?
 飼うよ!可愛がる一択だよ」
 これだけ懐かれてるのに、食えるわけないし。
<別に主の好きにするが良いが、其奴は見た目はともかく残忍なモンスターなのだがな>

 モンスターですか。そうですか。
 でも、飼うよ。


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