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誕生日プレゼントにゲームを貰ったので、堪能しようと思う
16:天然ソファを手に入れました
しおりを挟む「私は?」
咲樹が良い笑顔で少しシナを作りながら両手を広げてくる。
が、自分の姿を顧みやがれ。
「お前はまずシャワーだ」
ガルムに抱きついたまま、答えた。
この世界、漫画とかでよくある「クリーン」とか「浄化」とかは無いらしい。
その魔法自体はあるが、自分を綺麗にするわけではないとか。変なところでリアルだな。
なんて考えていたら、咲樹が海へと飛び込んだ。
ザッパーンと見事な音と波を立てて飛び込み、そのまま50m位沖まで泳いでから戻って来た。
全身に付いていたガルムの毛と砂の汚れは綺麗に落ちていた。
「久しぶりに見たね~咲樹のバタフライ」
呑気なオーベの声に顔を向けたら、焼きそばの麺を箸で持ち上げたまま固まっていた。
気持ちはわかる。
儚げ女神系の美女妖精が海に飛び込んで、バタフライし始めたら目が点になるよな。例え知り合いでも。
多分、前回見たのは現実咲樹のバタフライだろうし。
当の咲樹は、海から上がると魔法で水を浴び、服やら髪やらを乾かしてから近付いて来た。
「これなら良い?」
クルリと目の前で回って見せる。ワンピースがフワリと舞う。あざといな。
「良いだろう」
わざと横柄に答えたのに、咲樹は嬉しそうにオーベの隣に座った。
「俺の席!」
席も何も、レジャーシートが敷いてあるだけなんだがな。
でも、そこには俺のフランクフルトとビールが置いてある。
「ヴィンは特等席があるでしょ?」
咲樹の台詞に、伏せをしていたガルムが態勢を変えゴロリと横になる。顔は起こしたまま、体は少し丸め気味。腹の辺りに埋もれたら気持ち良さそうだ。
<座れ、主>
え?何で「主」と呼びながら命令口調?
まぁ、良いか。
ガルムに促され、フワフワ天然ソファに座った。
ガルムに寄り掛かり、手足を伸ばして座る。気分は王様。
「ビール」
飲みかけのビールを取って貰おうと手を伸ばす。
「ごめん。飲んじゃった」
俺の食いかけのフランクフルトを食べながら咲樹が小首を傾げる。
「俺のフランクフルト!」
半分以上残ってたのに!
「もう良いよ、自分で買って来るから」
ちょっと悲しい気分になりつつ、立ち上がる。
どっちにしても、新しいビールとツマミを買って来るつもりだったしな。
立ち上がると、首の後ろを引っ張られる。
何!?と思ったら、空高く放り投げられ、ガルムの首元に落ちた。
犯人は勿論ガルムだ。俺の襟を咥えてぶん投げたのだ。
「ふおぉぉぉ!」
テンション上がる!!
<機嫌直ったか?>
ガルムの問いに、首に抱きつきながら「おうよ!」と答える。
<借りは返した>
ガルムの視線の先には、苦笑した咲樹がいた。
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