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 弟のルパートに当主の座を譲った両親が、静かな土地で余生を過ごす為に王都を旅立ちます。
 『人の心を失った、ただの復讐をする人間』にならずに済んだのは、同じ記憶を持つ家族が居たからでした。
 逆に、途中で復讐を諦めなかったのも、やはり家族が居たからなのです。

 前回は果たせなかった『孫を抱く』という夢も、両親に叶えさせる事が出来ました。
 ルパートも無事に成人し、結婚して子供を授かり、公爵家を継ぎました。

 前回の記憶の無いルパートは、私と王太子の結婚には最後まで反対していましたが、生まれた子供を見て、何となく状況を察したようです。
 オーリーは私に似ておりますが、タイラーの面影おもかげもあります。
 大人になったら、もっと似てくるかもしれませんわね。

 その頃に周りが気付いても、あのクズ達の子供であるユダは、もう聖職者です。
 特に訳ありの聖職者は、子供を作れないように処置をされます。
 ユダもですわ。


「アンシェリー、元気でね」
 母が私を抱き締めます。
「今生の別れのような挨拶は止めてください、お母様」
 母を抱き締め返しながら、言葉を返します。
 ですが、私も母も知っているのです。
 突然の別れというものが存在している事を。

 前回、パーティーに出席する為に家を出る時に交わした挨拶が、最後の会話になりました。

「アンシェリー、お疲れ様。そしてありがとう」
 今度は父が私を抱き締めます。
「お父様もお疲れ様でした。色々とありがとうごさいました」
 宰相として、王太子妃の私を助けてくださいました。
 そして、前王や前王妃の権限も可能な限り削り取ってくださいました。
 そのお陰で王家の権限を殆ど私が握る事が出来たのです。

 今までは、父が宰相として、私に色々と与えてくれました。
 これからはタイラーが宰相として、王妃の私を支えてくれます。

「お飾りの王など、いつ居なくなってももう大丈夫だ。無理はしなくて良いからな」
 あのクズが側に居るだけで、私の心の負担が大きい事を父は知っていたのですね。

「3年……いえ、2年後には不帰の客となるでしょう」
 父から離れた私の肩に、タイラーがそっと手を添えました。

 その頃には、私はに全てを話している事でしょう。



 了
────────────────
最後までありがとうごさいました。

次回より、前回の「その後」のお話です。
性的暴行というか、かなりアレな表現があります。
苦手な方は、自衛お願いします。

いや、もう、本当に。
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