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しおりを挟む「貴方は私を軽蔑しますか?」
二人目の愛しい我が子を抱きながら、愛しい人へと問い掛けました。
今日はネイサンがお休みなので、執務室には私と宰相であるタイラーしかおりません。
優しい笑顔を浮かべたまま、タイラーが私をそっと抱きしめました。
「何か不安にさせるような事を行ってしまったかな?」
彼は私の問い掛けを、自分の行動のせいだと思ったようですね。
違うのです。
私は、彼等に死ぬより辛い人生を与える事にしました。
それが前回私を、私達家族を、私利私欲の為に陥れて処刑した彼等への罰としました。
あっさりと殺してなどやるものか、と。
最大限の屈辱と、最大限の苦しみを与えたかったのです。
それでも、偶に考えてしまうのです。
今回の彼等は、ここまで憎まれる様な事をしていないのに、と。
私は心から愛する人と結ばれ、愛され、子供を授かり、幸せになりました。
彼等も、愛する人と結ばれようとしただけなのです。
ですが、そう思う反面、今回も私が何も手を打たなければ、前回と同じ末路だったと確信しています。
両親を処刑し、まだ幼い弟に酷く苦しむ毒を飲ませ、その最期を私に笑いながら報告してきた二人の性根は変わらないのです。
現に彼等は、何の前触れも無く私を正妃の座から引きずり落とそうとしました。
前もって『婚約解消をする』という事も出来たのに、です。
「アンシェリー。私は貴女が何を思って、何をしようとも、貴女を死ぬまで愛し続けますよ。誰が貴女を責めようとも、私だけは貴女を、貴女のする事を肯定します」
タイラーの腕に少しだけ力がこもります。
「貴女は、私の知らない苦しみを背負っているのでしょう。独りで居る時に、地獄を見て来たような空虚な目をしているのを気付いていますか?」
それは……気付いておりませんでした。
「いつか、全てを貴方には……お話出来たらと思います。まだその覚悟の無い私を許してくださいませ」
「いつまででも待ちます。ですが、出来ればカレーリナやネイサンにも、その時は話してやって欲しいです。彼等も、全てを受け入れてくれるでしょうから」
私の耳元で、ふふふとタイラーが笑いました。
執務室の扉がノックされました。
返事をすると扉が開き、我が子オーリーと自分達の子ネリーを連れたカレーリナがおりました。
彼女のお腹には二人目がおりますのに、まだ仕事を続けているのです。
今は侍女ではなく、乳母になりましたが。
「サンドラ様がお子様を連れていらっしゃいました。サロンにしますか?中庭にしますか?」
今日はオーリーの婚約者候補として、サンドラの所のダリアと顔合わせを行うのです。
ネリーは既に、タイラーとマリリナ様の子であるマリアンヌ様と婚約しております。
「異母兄妹で結婚話が出たら困るでしょ?」と、ネイサンが早々に婚約を成立させたのです。
ネリーとマリアンヌも、お互いに好意を持っているようですので、反対する理由はありませんでしたから直ぐに許可を出しました。
「お天気が良いから中庭にしましょうか」
私の返事にカレーリナは微笑んでから、タイラーへと向き直りました。
「宰相様はどうされますか?」
「私が行く理由が無いからね。一人淋しく執務をしているよ」
執務机の上の書類に、タイラーはポンと手を置きました。
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