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しおりを挟む「おめでとうございます!男の子ですよ!」
私は無事に、男の子を産みました。
元気な泣き声が聞こえます。
顔を見せてもらうと、愛しい旦那様に似ている気がします。
2歳上のあの子よりも大分利発そうに見えるのは、親の欲目かしら?
「妃殿下、お疲れ様でした。これで名実共に王太子妃ですね」
タイラーがそっと私の手を握りしめます。
もし私が男児を産めなかった場合アレを後継にしようという動きが、密かに一部の貴族の中にあったようです。
教会が許すとも思えませんでしたが、これで無駄に争う心配はなくなりました。
そのような計画など叩き潰すのは造作もありません。ただその僅かな時間と労力でも勿体無いのです。
何せ、今の王族でまともに働いているのは私だけですから。
執務の途中での授乳にも、大分なれてきましたわね。
最初は退室していたネイサンも、背中を向けて仕事を続けるようになりました。
「落ち着いたら、王と王妃には、旅行にでも行っていただきましょうか」
愛しい我が子オーリーに乳を与えながら、傍らのタイラーに話し掛けます。
「旅行ですか?」
オーリーを優しい瞳で見つめていたタイラーが私へと視線を移します。
「死出の旅ですね!」
私の意図に先に気付いたのは、こちらを見ないようにしているネイサンです。
「それは良いですね。あの方達の無駄遣いが無くなれば、オーリー様に存分にお金が使えますわ」
オーリーのベッドを整えていたカレーリナがとても良い笑顔を浮かべます。
移動が出来るこのベッドを贈ってくださったのは、サンドラの旦那様であるローガン様です。
今頃は、同じ物を公爵家でもサンドラとローガン様のお子様も使っているのでしょうか?
「王陛下、王妃陛下。お気を付けていってらっしゃいませ」
馬車の窓を開けて手を振る二人へ挨拶をします。
「あちらの情勢を確認したら戻って来ますからね」
王妃が態とらしく仕事を強調していますわ。
先日の国政会議で宰相補佐が「少し遠いのですが、ここ最近著しく発展を遂げたインタレント国から、同盟の申込みがありました」と報告をしました。
これ自体は本当の話です。
「では、誰か調査に行かなければいけないですな。まぁ調査と言っても、本当に同盟を結ぶ価値があるのか見てくるだけなのですが」
宰相が更に言いました。
本来、そのような事は下の者が簡単に調べられます。
王族自ら行く必要などありません。
それ専門の調査部門もあるくらいです。
ですが今回は、王族自ら行っていただきましょう。
「では、私がオーリーと一緒に観光がてら観てまいりますわ」
手を上げて、乳児を連れて行っても大丈夫なくらい楽な視察だと匂わせる発言をします。
王と王妃の目が輝きました。
公費で旅行ができると思ったのでしょう。
「まぁ!幼い子を連れて行くのは危険でしょう?私達が行きますわよ」
「うむ。大事な世継ぎに何かあったら困るからな」
本当の行き先等気付かず、自ら名乗り出てくださいましたわ。
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